突然だが、皆さんは「記者」という職業に就くには、大学時代にどのような専攻をしている人が多いと思うだろうか。

文章の基礎を学べそうな文学部や、メディアビジネスの仕組みを学べそうなメディア系の学部、はたまたIT系の記事を書いているのだから理系の学部出身なのではないか、と想像した人が多いことだろう。それで言うと筆者の大学時代は、少し特殊なのかもしれない。

筆者は、大学時代は「経営学」を専攻していた。入学してすぐに簿記の教科書とにらめっこをし、学年が上がったら財務会計と管理会計の違いを学び、といった具合に、今の仕事に生きるような文章の勉強も、IT関係の勉強もまったくしていない4年間だった。なぜ、そんな筆者が今の仕事に就けたのかはまた別の機会に話すとして……

ともかく、筆者のいた学部からメディア系の職に就いた人は圧倒的に少なく、多くの学部の友人は銀行や保険などの金融業界や企業の経理部など、専攻を生かした職場に就職していった。

そんな筆者が最近、友人と話している時によく聞く単語がある。それが「FP」という言葉だ。

「FP」は略さずに言えば「ファイナンシャルプランナー」となるが、この資格を取得するべく、日夜勉強に励んでいる友人たちが多いのだ。企業で取得が必須になっている人もいれば、転職や昇進のために取得を目指している人もいるなど、金融業界で働いていく上で、FPは避けては通れない道のようだ。

そんな友人たちの苦労話を聞きながら、先日1つの疑問が浮かんだ。

「FPの勉強ってどんなことをするのだろう?」

そこで今回は、みずほフィナンシャルグループ傘下で企業のコンサルティングおよび金融機関の人材育成に係る資格取得支援や投資教育を行う日本投資環境研究所に赴き、進化するFPの勉強方法や金融業界で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)について伺った。

  • 日本投資環境研究所 執行役員 小島竜一氏

新聞もスマホで読める時代だからこそ「資格取得」もITで効率化

そもそも「FP(ファイナンシャルプランナー)」とは、どんな資格なのだろうか。

FPとは「生活や家計に関する身近なお金のエキスパート」であり、日本FP協会では「家計のホームドクター」のような存在と位置付けられている資格だ。

「銀行・証券や保険会社などをはじめとする金融業界では、FP資格は必要不可欠の資格となっております。会社によって、何年目までに取得する、この業務を行うためには資格が必要、といったルールの差異はありますが、営業、店舗スタッフといった業務内容を問わず資格取得が推奨されております。自身のキャリアップや、顧客への適切な助言のためにも、資格を取得することは必須であり、顧客に対する信頼のバロメーターになります」(小島氏)

  • FPの資格獲得の必要性について語る小島氏

転職や昇進の際に資格を獲得しておくと有利になることから、自主的に隙間時間に資格の勉強をしている人は多い。とはいえ、普段の業務に加えて資格の勉強を行わなくてはならないとは、金融業界に勤める友人たちには頭が下がる思いだ。

「FP資格を保有することにより、高度でより顧客本位の提案をすることが可能となります。それゆえ、FP資格の必要性は高まり、各金融機関は資格取得者を増やそうとしております。資格取得のサポートを行う企業からは『金融知識を身に付けたプロの人材を育成する』ことが求められております」(小島氏)

日本投資環境研究所では、FP資格取得のための教材を用いて講義し、問題演習を繰り返し行うことで知識定着を図る資格取得サポートを実施している。一方で、新聞ですらスマホアプリで読めてしまう時代に、現在使用している教材に加えて「ITを活用した」コンテンツを使用することができないか検討していたという。

そこで白羽の矢が立ったのが、記憶定着をサポートする学習サービスの「Monoxer」だった。

  • 「Monoxer」イメージ

日本投資環境研究所は、3級FP技能検定向けの教材としてMonoxerを2023年3月に導入した。同社は3級FP技能検定取得に向けたオリジナルのbook(問題集)を作成し、Monoxerを活用して受講者向けに資格取得をサポートを行っている。

「昨今、YouTubeなどの無償のコンテンツを活用して資格の勉強をすることも可能です。しかし、それだけでは、万人が知識を定着させて自分のものにすることは難しいと思われます。弊社ではファイナンシャルプランナーの1歩目を踏み出すために必要な基礎知識を習得するため、まずは3級FP技能検定の学習カリキュラムとして、Monoxerを導入いたしました。2級以上のFP技能検定や証券外務員資格でも活用できるよう現在進行中です」(小島氏)

日本の金融業界は変わるフェーズに来ている

Monoxerは「理解」ではなく「定着」に特化した新しい教育ツールとして、塾や学校などの教育現場で導入されており、日本投資環境研究所のような一般企業への導入は新しい試みとして広がりを見せている。

日本投資環境研究所では最初、先生が生徒を管理する必要がある塾や学校のように、企業に会社員の学習進捗を管理したいというニーズがあるのかが分からず、導入の決定に二の足を踏んでいたという。

「しかし、取引先企業の方に伺ってみると、『学習進捗を管理したい』という声は思いのほか多く聞かれました。紙の教材では、社員の理解度や学習進捗度を把握することができないため、的確なアドバイスができていなかったというのです。そこで教材をデジタル化することで学習進捗を管理し、なおかつ『記憶の定着』に強みを持ったMonoxerを導入することで、効率の良い学習環境を構築できたと考えています」(小島氏)

今回の導入によってFP資格の合格率を上げ、優秀な金融人材を育成することができれば、顧客へは安心して任せることができる企業であるという認識を与えることができるほか、新入社員を採用する際にも、社員への教育が手厚い企業だというアピールポイントにすることができるという。良い人材の確保ができれば、それがまた顧客にとっても安心できるポイントとなり……というように良い循環が生まれていく仕組みだ。

最後に小島氏に今後の金融業界並びに金融教育機関としての展望を聞いた。

「今、金融業界は大きく変化するフェーズにきております。東京証券取引所が企業に低PBR(株価純資産倍率)の改善要請を出したことに象徴される構造的変革、また、コロナ後の取り戻された日常が経済を活性化させることで、世界的にみてもマーケットが拡大していく可能性が高いと思います。政府も以前から掲げている『貯蓄から投資』と併せて『国民の金融リテラシー向上』『金融教育の充実』などの施策を推進しています。このような背景のもと、金融知識並びに金融リテラシーを兼ね備えた人材を育成するためにはDXを駆使した学習方法の多様化は必須と考えています。私も長年証券業務に携わっており、販売手法、提案内容が格段に高度化し、変化してきているのを肌で感じています。この変化に対応できる優秀な金融人材の育成が当社の重要な役割であり、責任であると感じています」(小島氏)