その結果、水処理分離膜の技術と酵素を活用したバイオ技術を融合した「膜利用バイオプロセス」により、非可食糖を精製・濃縮する技術が実証プラントで検証され、以下の成果が得られたとした。

  • 余剰バガスから非可食糖、オリゴ糖、ポリフェノールを製造するシステムを72時間連続で運転させることに成功
  • 非可食糖製造において、コスト高の要因となる酵素を膜で回収・再利用することにより、酵素使用量の50%削減を実証
  • 従来は糖液に含まれる水分を熱によって蒸発濃縮していたのに対し、膜を利用することにより50%以上の消費エネルギー削減が可能であることを実証
  • タイでのシステム普及に向けて、現地タイ人技術者へ技術移管を実施
  • 応用実証として、自製糖化酵素を用いた実証に成功
  • 他原料バイオマスとして、タイで排出されるキャッサバパルプ(でんぷん製造の際に発生するキャッサバ芋の搾りかす)の糖化液も同プラントで精製・濃縮できることを確認

これらのことから、今回のプロセスの分離膜を用いて有機酸のような不純物と分離することで精製した非可食糖が、エタノールやコハク酸製造の発酵原料として利用できることが確認された。また、生産物である非可食糖やオリゴ糖、ポリフェノールの品質・効用・安全性の評価やマーケティングを進め、市場性や市場開発の道筋も確認されたとする。これにより、石油由来の化学品を、食糧と競合しない非可食植物由来の化学品に代替することで、循環型社会の実現が可能になるとしている。

今後東レとDM三井製糖は、石油由来の化学品を非可食植物由来の化学品に置き換えていくため、非可食糖製造の事業化を目指すとともに、タイ国内で今回のシステムを普及させることで、同国のエネルギー政策への貢献につなげていくとする。また、製糖企業やでんぷん製造企業などのバイオマス保有者や化学メーカーと協力し、非可食植物由来の化学品を製造するサプライチェーンの構築を目指すとした。

また東レは、非可食糖を原料として、微生物発酵技術と分離膜を活用した精製技術を組み合わせた独自の合成法により、ナイロン66の原料となる100%バイオアジピン酸を製造する技術を開発中だという。今回の成果により、その前段階となるバイオマスから非可食糖を製造する技術が確立され、量産化の目処が得られたことから、食糧と競合せず豊富に存在する農業残渣を原料とした繊維、樹脂、フィルムなどに用いるバイオマスポリマーの一貫製造技術の確立を目指すとしている。

またNEDOは、このような先進的技術の海外実証事例を増やしていくことで、日本のエネルギー関連産業の普及展開やエネルギーセキュリティ、国内外のエネルギー転換・脱炭素化に貢献するとしている。