2022年10月18日から21日まで幕張メッセにて開催されている「CEATEC 2022」で、ソニーは、「ずっと、地球で感動を分かち合うために。」というテーマを掲げ、「地球」「社会」「人」のそれぞれに対する視点で、環境課題解決に向けた取り組みなどを展示している。

  • CEATEC 2022のソニーブース

    CEATEC 2022のソニーブース

誰でも人工衛星からの撮影が可能な「STAR SPHERE」

「地球」をテーマにしたエリアでは、人工衛星を活用した地球に対する取り組みとして、宇宙からの視点を身近なエンターテインメント領域にまで広げるためのプロジェクト「STAR SPHERE」が紹介されている。

「すべての人に宇宙を身近に感じてもらいたい」というコンセプトのSTAR SPHEREは、ソニー・東京大学・宇宙航空研究開発機構(JAXA)が参画する共同プロジェクト。誰でも利用することができるサービスとして、地上から人工衛星に指示を出し、衛星からの景色を撮影することができるという。実際に使用される超小型人工衛星は、今冬の打ち上げを予定しており、2023年度からのサービス開始を目指して開発が進んでいるとのことだ。

  • STAR SPHEREで打ち上げられる予定の人工衛星の模型

    STAR SPHEREで打ち上げられる予定の人工衛星の模型

今回のブースでは、実験的な撮影シミュレータ「Space Shooting Lab」が展示中。ディスプレイには、人工衛星が通過する予定の軌道と、そこから撮影できる光景のシミュレーション画像が表示され、手元のリモコンを操作することで、撮影範囲を確認・指示することができる。

ソニーのブース担当者によると、実際の撮影は指定した場所を衛星が通ったタイミングで行われるため、基本的に予約撮影になるという。また、特定のタイミングを指定して宇宙からの画像を撮影できることについては、「記念日や誕生日のような意味のある瞬間の1枚を宇宙から提供できるので、かけがえのない1枚になると思う」と話す。

  • 撮影シミュレータに表示された夜間の日本列島の様子

    撮影シミュレータに表示された夜間の日本列島の様子

  • 人工衛星が航行する予定の軌道を表したシミュレータ画像

    人工衛星が航行する予定の軌道を表したシミュレータ画像

サービスの価格については、カメラの角度を固定した状態で指定したタイミングの画像を撮影する場合は1枚で1万円~2万円、人工衛星を独占して操作し角度まで指定して撮影する場合は約50万円での提供を予定しているとのことだ。

宇宙での電波受信実験に成功した「ELTRES」受信機の実物を展示

またソニーブースの「地球」をテーマにした展示では、国際宇宙ステーションの船外実験プラットフォームに設置された状態で、地上のIoTデバイスから送出された電波を受信することに成功した低軌道衛星搭載「ELTRES」受信機の実物も展示されている。

  • 低軌道衛星搭載「ELTRES」受信機は模型ではなく実物が展示されている

    低軌道衛星搭載「ELTRES」受信機は模型ではなく実物が展示されている

現実と映像を合成する「バーチャルプロダクション」

社会に対するソニーのソリューションとして、現実空間の被写体とリアルタイムで合成できる背景を表示する「バーチャルプロダクション」を展示している。

  • ソニーが展示したバーチャルプロダクション

    ソニーが展示したバーチャルプロダクション

バーチャルプロダクションは、大型LEDディスプレイにバーチャル背景を表示し、現実空間のオブジェクトや人物をカメラで撮影することで、背景と被写体がリアルタイムで合成された映像を製作できる技術。CGでの合成を用いないため、物体と背景の境界に違和感が生まれにくいという。

  • ソニーのデジタルシネマカメラ「VENICE」で撮影した映像が同社のCrystal LEDディスプレイに映し出される

    ソニーのデジタルシネマカメラ「VENICE」で撮影した映像が同社のCrystal LEDディスプレイに映し出される

この技術を活用することで、ロケーション撮影を行ったような映像制作をスタジオの中で実現することができるため、撮影時の発電コストおよび撮影スタッフなどの移動コストを削減し、CO2排出量の削減にも貢献するとしている。

環境配慮素材を使用したEV「VISION-S 02」も展示

また、社会に貢献するソニーの取り組みの1つとして、2022年1月に発表されたEVで、車内機材には同社が開発したもみ殻由来の新素材「Triporous(トリポーラス)」などを使用したSUVタイプの試作車「VISION-S 02」も展示されている。

  • ソニーのEV「VISION-S 02」の内部には、Triporousのほかにも竹などの自然素材が使用されている

    ソニーのEV「VISION-S 02」の内部には、Triporousのほかにも竹などの自然素材が使用されている

独自開発したリサイクル紙素材を展示にも活用

人間単位での環境への取り組みに関する展示では、ソニーが独自開発した紙素材「オリジナルブランドマテリアル」を紹介している。

竹やさとうきび、リサイクルペーパーを原料としており、プラスチックの使用量を削減したパッケージを実現。同社のヘッドホンやスマートフォンなどの製品パッケージとして、すでに市場でも活用されているという。

なお、ブースの展示物が置かれた台や装飾、さらにブース上部の社名ロゴにも、このオリジナルブランドマテリアルが使用されているとのことだ。

また、発泡スチロールに代わる緩衝材として脱プラスチックへの貢献が期待される、回収古紙などの紙材を原料とした紙発泡剤も紹介されている。

  • 発泡スチロールに置き換わることが期待される紙発泡剤。これらの展示物が置かれた台にも、オリジナルブランドマテリアルが使用されている

    発泡スチロールに置き換わることが期待される紙発泡剤。これらの展示物が置かれた台にも、オリジナルブランドマテリアルが使用されている

カメラの冷却機構から生まれたウェアラブルサーモデバイス

また、効率的な冷却・加熱によって空調などの効率化に貢献するウェアラブルサーモデバイス「REON POCKET 3」も展示されている。

カメラの開発に携わっていた担当者が、カメラ内のIC冷却機構に着想を得て開発が開始された同製品は、本体の接触部分を冷温それぞれ4段階から温度設定が可能で、冷却温度を自動で調整する機能なども搭載されている。

REON POCKETは、販売開始以来好調な売れ行きとのことで、2022年4月に発売した3世代目製品も、すでに完売しているとのことだ。

  • カメラの排熱機能から着想を得たというウェアラブルサーモデバイスのREON POCKET

    カメラの排熱機能から着想を得たというウェアラブルサーモデバイスのREON POCKET

このほかにも、再生プラスチックを素材として使用しながら、試行錯誤の末に従来機と変わらない音質を実現したオーディオ機器なども展示されている。

  • 再生プラスチック素材を使用したオーディオ機器

    再生プラスチック素材を使用したオーディオ機器