早稲田大学(早大)は4月10日、新しい原理の無線回路「パリティ時間(PT)対称性共振結合回路(並列接続)」を開発し、センサ感度が2000倍にまで向上することを確認したことを発表した。

  • 微弱な生体信号を無線で測る新しい原理の共振結合回路システム

    微弱な生体信号を無線で測る新しい原理の共振結合回路システム(出所:早大プレスリリースPDF)

同成果は、早大大学院 情報生産システム研究科の高松泰輝助手、同・三宅丈雄教授らの研究チームによるもの。詳細は、実験室レベルの基礎的な研究と産業の間を埋める新しい材料の応用研究に関する技術全般を扱う学術誌「Advanced Materials Technologies」に掲載された。

近年、コンタクトレンズに電子デバイスを組み合わせた「スマートコンタクトレンズ」の開発が盛んだ。その使途用途は主に、視覚拡張機器・生体情報計測機器・疾病治療機器などがある。しかし同デバイスの開発は、現状プロトタイプの段階に留まっていた。実用化を困難にしている主な要因は、無線システムの設計にあるといい、この仕様をどうするかによって、性能(センサ機能・検出方式・消費電力)と価格(センサレンズ・無線計測器・レンズ素材)が大きく異なってくるとのことだ。

  • スマートコンタクトレンズにおける新産業創出

    スマートコンタクトレンズにおける新産業創出(出所:早大プレスリリースPDF)

そうした中で研究チームは今回、量子効果を取り入れたPT対称性共振結合回路(並列接続のGain-Loss結合回路)を新たに開発。これにより共振結合系の高Q値化を実現し、数百Ωの共振回路型バイオセンサにおいて、これまでは計測が困難だった数Ωという微弱な抵抗変化を増幅しながら測る無線計測システムを開発したという。

たとえば、涙に含まれるグルコース濃度を計測する場合、計測対象は微弱な信号変化(0.1mM~0.6mM)となるため、既存技術のLoss-Loss結合回路では、グルコース濃度に伴う共振特性の変化率(感度)を読み取ることが極めて難しいとする。

それに対し、Gain-Loss結合回路を用いた場合、結合系のQ値を理想的に高くできるため、高感度な無線計測が実現可能だという。しかし、既存技術の回路系(直接接続)では、センサ側に溶液抵抗を含む数百Ω程度の高抵抗な糖度センサ(化学抵抗器)を直接組み込むことができず、そのため数Ω程度の微弱な抵抗変化を共振回路特性に反映することは困難だったという。