ガートナージャパン(Gartner) は4月5日、企業がデータを活用してビジネス成果を実現するには、データ管理環境の近代化と内製化が必要であるとの見解を発表した。

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Gartnerシニアディレクターアナリストの一志達也氏は、開催中のガートナーデータ&アナリティクスサミットにおいて、データウェアハウス(DWH)からの7つの変化を解説した。

1つ目の変化は、「データソースの量と種類」。SNSやECサイト、IoTなど企業が活用できるデータの種類は以前と比べものにならないほど増え、人間の手によるものだけでなく、カメラやセンサなどから生成されるデータの量も増える一方だという。

2つ目の変化として、「データソースの量と種類という変化にデータの蓄積環境が対応」を揚げた。データソースの量と種類の変化に伴い、データを格納して蓄積する環境も扱えるデータの量と種類の両面に柔軟性と弾力性をもって対応し、データの処理方法も含めて選択肢が多様化しているということだ。

3つ目の変化は、「ETL(抽出/変換/ロード)からELT(抽出/ロード/変換)へ」。データソースから抽出したデータを変換して蓄積するため、以前は変換処理を施してから蓄積層へ流し込んでいたが、今では生データのまま先に蓄積層へ流し込み、変換処理は後で行うのが主流となっている。処理能力の問題に加え、変化の激しい使用用途に合わせて都度変換処理を行うニーズに対応するためだと説明した。

4つ目の変化は、「変化4:データ利用環境や手法の多様化」。これまで、DWHに蓄積されたデータを活用する代表的な手段はBIであったが、今は機械学習モデルの作成やメンテナンス、メトリクス・ストア、アナリティクス・コンポーネントのように細分化した単位での提供、そして分析結果をリバースETLで業務システムへと書き戻すなど、データの有効活用には適切な手段を用いて情報提供を適時行う意識が必要だとしている。

5つ目の変化は、「仮想化技術の進展(コンテナ技術の普及)」。データの蓄積や活用などあらゆるアプリケーションが動作する環境構築は以前のように何ヶ月もかかるものではなく、コンテナ技術を有効に活用すれば数日〜数時間で完了し、その環境を使い始められるという。

6つ目の変化は、「クラウドへの移行」。今やデータの蓄積も活用もクラウドを中心に行われており、PaaSやSaaS を活用すれば、環境構築や運用の手間は一層大きく削減され、初期費用なしの従量課金は企業が支払うコストに大きな変化をもたらしているということだ。

7つ目の変化は、「データ品質の重要性と責任者不在を再認識」。これまで主に業務システムの延長上で行われてきたデータ活用から、より高度なデータ活用が企業の全域で行われるようになると、これまで誤魔化してきたデータ品質やマスタ・データの不備が目立ち、企業はその課題解決を模索するという。Gartnerには、データ品質について顧客から相談が寄せられるが、IT部門だけでは解決できない非テクノロジの問題に対し上手く対処できていない企業が大多数になっているという。

一志達也氏は次のように述べている。「D&Aのリーダーが、より大きなビジネス上の成果を獲得するには、ビジネス領域や業務の知識を蓄えた上で、ビジネス部門との対話力を高めるだけでなく、社内外に向けての発信力を高めることが重要です。テクノロジの側面では、クラウド・ファーストで機動力を向上させ、柔軟性と弾力性に優れたインフラでのIT資産運用を行うことも検討すべきです。そして、それらを実現するには、D&AのスキルやITスキルに加えて、ビジネスの専門知識、ソフト・スキルが必要となることから専門性の高いD&Aチームによる内製化が重要な要素になります」

「企業は近代的なデータ管理基盤と活用手段となる技術を理解して進化を目指し、特にD&Aでビジネス課題の解決に取り組む部分については、内製化を前提に人材の確保を推し進めなければなりません。そうでなくては、データ利活用での成果獲得、すなわちデータ・ドリブンなビジネスの実現には至らないでしょう」