米Knometa Researchの半導体工場生産能力調査の最新版「Global Wafer Capacity 2023レポート(2022年末時点の世界の半導体ファブの生産能力を集計)」によると、米国半導体メーカー(自社で半導体を製造している企業)のウェハ生産能力は月産460万枚(200mm換算)ほどで、その内56%が米国以外の自社ファブによるものだという。

主要な半導体生産国・地域(米中欧日韓台)の中で、米国だけが国外の生産能力が国内を上回る特徴があるとKnometaは指摘している。

  • 米国半導体メーカーが所有する自社ファブの地域・国別生産能力

    米国半導体メーカーが所有する自社ファブの地域・国別生産能力(2022年12月時点) (出所:Knometa Research)

米国半導体メーカーの国外の生産能力が高いのは順にシンガポール(全体シェアの22%)、台湾(同12%)、日本(同10%)、ドイツ(同4%)、アイルランド(同3%)、イスラエル(同2%)、中国(同1%)、韓国(同1%未満)となっており、シンガポールにはMicron TechnologyとGlobalFoundries(GF)が4ファブずつ、台湾にはMicronが4ファブ、Diodesが1ファブ、日本にはMicronが4ファブ、Texas Instruments(TI)が2ファブ、onsemiが1ファブ、ドイツにはGFが2ファブ、TIが1ファブ、アイルランドにはIntelが1ファブ、Analog Devices(ADI)が1ファブ、イスラエルにはIntelが2ファブをそれぞれ有している。

シンガポール、台湾、日本に多くのファブを持つMicronの月産能力は260万枚で、そのうち65%が米国外で生産される。また、GFも14%が米国外、Intelが同9%、TIが5%を米国外で生産している。

この数年間で米国半導体メーカーの多くが米国でのファブ建設プロジェクトを発表しており、そのうちのいくつかが、2022年7月に米国政府が米国の半導体研究、開発、製造を促進するために制定したいわゆる「CHIPS法」の後押しを受けて計画されたものとなる。

すでに米国で建設が進められ、2024~2025年にかけて稼働予定の米国メーカー所有のファブは次のとおりである。

  • Intel:アリゾナ州チャンドラーのFab 52/62、オハイオ州ニューアルバニーのFab 27
  • TI:テキサス州シャーマンのSherman SM1/SM2
  • Micron:アイダホ州ボイジーの本社工場Fab

このほかMicronは、ニューヨーク州クレイにも大規模なファブ群を建設予定であるが、このプロジェクトは同社の長期的な生産能力拡大計画の一部であり、建設は早ければ2024年に開始される。また2023年1月、ADIがオレゴン州ビーバートンにあるファブの生産能力を2倍にする計画を発表している。

米国内のこれらの大規模な新ファブ建設により、今後数年間で米国内の半導体生産能力の割合が増加することが目されるが、米国外でも新工場を建設(もしくは計画)していることに加え、Intelによる保留中となっているTower Semiconductorの買収によって、より海外生産能力の割合が高まる可能性がある。TowerがIntelの一部となり、本社がイスラエルから米国に移った場合、米国メーカーによる海外での生産能力シェアは1ポイント高くなる見通しである(IntelのTower買収については、政治的理由で中国規制当局が難色を示していると言われている)。