Infineon Technologiesは、ドイツ連邦経済・気候行動省(BMWK)の環境審査および同社取締役会の最終承認が得られたことを受け、パワー半導体およびアナログ/ミクスドシグナル半導体向けの新たな300mmウェハ対応工場の建設を開始することを発表した。
新工場の計画は2022年11月に発表済みで、その際は欧州委員会の国家補助金決定とドイツの補助金手続きに従って、欧州CHIPS法の目的に沿って資金提供されることになっていたが、自動車業界を中心とする顧客からの需要の高まりに対応することを目的にそうした資金提供の決定を待たずに早期の起工を決めたという。新工場への投資額は50億ユーロで、このうち約10億ユーロに対し、同社では公的資金の申請を行っているとしている。
また、同社は今回の投資が、2030年までにEUが世界の半導体生産の20%のシェアを達成するという欧州委員会の宣言目標を達成するために不可欠だと主張している。
新工場完成予想図 (出所:Infineon)
今回の発表に基づき、新工場の建設は間もなく開始される予定。新工場での製造開始は2026年秋が予定されており、この工場の稼働により約1000人の高度人材の雇用が創出されるという。
なお、新工場は「One Virtual Fab」として同社のフィラッハ工場(オーストリア)と密接に連携する仕組みが採用され、それにより顧客に対して、迅速かつ大量にパワー半導体を供給できるようになるという。ちなみに、新工場がフル稼働時した際には年間50億ユーロ程度の売り上げが想定されている。
世界中でパワー/アナログ半導体メーカー各社が300mmウェハに対する投資を積極的に進めている。日本でも、パワー半導体メーカーが投資を行うことを表明しているが、日本の各社の投資額を合わせてもInfineonの投資額には達しておらず、このままの状態では将来、数千億円規模の投資を継続していく欧米パワー半導体企業に対し、売り上げで大きく差がつけられてしまうことが危惧される。また、後発の中国勢も国策としてパワー半導体の製造強化を図っており、そうした新興企業からの追い上げも懸念される。