東京大学(東大)は2月6日、ダークマター起源の高エネルギーガンマ線を探索するため、スペイン・カナリア諸島ラパルマ島のチェレンコフ望遠鏡「MAGIC」を用いて、天の川銀河中心領域を2013年から2020年まで継続的に観測した結果、ダークマターの可能性がある未知の素粒子である「超対称性粒子」が予言するテラ電子ボルト(TeV)以上の質量領域に到達したことを発表した。

また、観測の結果として十分な信号は見つからなかったが、その素粒子的な性質に強い制限を与え、宇宙初期にダークマターがどのように作られたかについて、従来のシナリオに一石を投じることになったことも併せて発表した。

同成果は、東大 宇宙線研究所(ICRR)の稲田知大協力研究員、同・モリッツ・ヒュッテン特任研究員、同・手嶋政廣教授、同・窪秀利教授、高エネルギー加速器研究機構の郡和範准教授、独・マックスプランク物理学研究所の研究者らも参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

未知の物質であるダークマターを検出できるとされる方法の1つに、同物質同士が衝突した際の対消滅で生じると予測されるガンマ線を観測するというものがある。ガンマ線は地上では観測できないが、宇宙から飛来して大気圏内の分子と衝突して二次粒子の空気シャワーを発生させた際に生じるチェレンコフ光を捉えることで、間接的に観測することが可能である。

ダークマターの質量は、特に有力な理論によればGeV~TeVの範囲に存在すると予想されており、対消滅時に生じる光子も同様のエネルギーを持つ。TeV以上の高エネルギー粒子を地上の実験室で生成するのは難しく、また予想される信号数も少なくないが、広大な地球大気を利用するチェレンコフ望遠鏡なら100TeV程度までの感度を持つため、未踏のテラスケール質量のダークマターを探すにはうってつけと考えられている。

また、ダークマターは重力の強いところに集まるとされ、地球に最も近い密集領域と想定されるのが、天の川銀河の中心部とされている。ただし、ダークマターがどのように空間的に分布しているのかについては、まだ理論的にも実験的にも未解明の部分もあり、ガンマ線でのダークマター探索の結果について、しばしばその不定性が課題とされてきた。そこで研究チームは今回、高いダークマターへの探索感度を保ちつつ、そのような課題を解決する研究方法を提案することにしたという。