東京農工大学(農工大)は2月1日、ナノ粒子の材料応用の際に多用されている「オレイル型分散剤」が、優れた粒子分散機能を有する理由として、同分散剤の分子中央にある二重結合の存在が寄与していることを解明したと発表した。

同成果は、農工大大学院 生物システム応用科学府 食料エネルギーシステム科学専攻の須藤達也大学院生、同・大学院 グローバルイノベーション研究院の山下翔平助教、同・大学院 生物システム応用科学府の小池菜摘氏(研究当時)、同・大学院 工学研究院の神谷秀博教授、同・大学院 農学研究院 応用生命化学部門の岡田洋平准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、欧州15か国16の化学団体が参加するChemistry Europeが刊行する化学全般を扱う学術誌「Chemistry - A European Journal」に掲載された。

直径が100nm以下の微粒子であるナノ粒子は、そのサイズならではの特徴的な性質を有している。ところが、粒子同士が凝集して大きな塊を形成しやすく、サイズに起因する優れた特性が容易に損なわれてしまうことが材料として応用するにあたっての大きな課題となっており、この凝集を抑制し、粒子が分散した状態を維持することが極めて重要とされている。

ナノ粒子の凝集を防ぐ手段は複数ある。例えば、粒子表面に電気を帯びさせ、その結果として生じる電気的な反発力を利用するというもの。また、長さのある有機分子(分散剤)を粒子表面に被覆することで、それによって生じる立体的な反発力を利用するという手法もある。中でも後者は、電気的な反発力を利用しにくい低極性溶媒中にナノ粒子を分散させる際に有力な手法であり、材料開発の点でも需要が高いという。

ところが、低極性溶媒中でのナノ粒子の分散凝集理論はまだだ発展途上であり、どのような構造の分散剤を用いるべきかについては、トライ&エラーを繰り返すことで判断しているのが実情だとする。

研究チームはこれまで、分散剤の構造と粒子分散性の相関を明らかにするため、さまざまな検証を実施してきたという。そこで今回の研究では、低極性溶媒中にナノ粒子を分散させる際に多用されている「オレイン酸構造の分散剤(オレイル型分散剤)」に着目。この構造の分散剤がなぜ高い粒子分散機能を有しているのかを実験的に検証することにしたとする。

  • オレイル型分散剤の概略図

    オレイル型分散剤の概略図 (出所:農工大Webサイト)