半導体市場動向調査会社TrendForceによると、2023年のファウンドリ市場規模は全プロセスで需要が減少しているため、前年比4%減となると予測されるという。

2023年第1四半期、主要なファブレス各社はウェハの投入要求数量を削減しているが、第2四半期はさらにウェハの投入枚数を減らす可能性があり、上半期は総じてファウンドリの稼働率は低いレベルとなることが想定されるとしているが、下半期には早期に在庫調整が進められた一部製品の受注が回復する可能性があるともしている。ただし、世界経済の不安定さは依然として影響が大きく、ファウンドリ各社の稼働率は予想ほど早く回復することはないだろうともしている。

また同社は、地政学的リスクの顕在化がサプライチェーン全体の地理的再編につながったことも指摘。特に中国以外のICメーカーが、中国での半導体生産を別の地域に振り替える動きを見せており、将来的にはファウンドリ市場の需要と供給の状況も徐々にローカル化され、ファウンドリ間で設備稼働率にばらつきが生じ、業界全体の稼働率の回復にも影響を及ぼす可能性があると指摘している。

  • ファウンドリ市場規模の変遷と今後の予測

    ファウンドリ市場規模の変遷と今後の予測 (出所:TrendForce、2023年1月)

低迷が続く2023年上半期

毎年第1四半期は家電製品の販売が閑散期となるが、2023年はそこに在庫消費速度の鈍化も加わり、消費者製品向けPMICやMOSFETなどのファウンドリへの注文が減少。そのため200mmウェハファウンドリは稼働率低下が続いており、第3四半期までほぼ横ばいの稼働率となる見通しだという。

一方の300mmウェハファウンドリだが、先端プロセスで先頭を走るTSMCも、上半期は理想よりも低いレベルの稼働率に留まると予想されるという。下半期に、5nmの稼働率が最適なレベルへと戻ると見られるが、競合のSamsungは、QualcommとNVIDIAが他のファウンドリに生産を割り振ったことから、8nm以下の稼働率は通年通して低いと予想している。

また、より成熟したプロセスについては、2023年上半期の稼働率は75~85%程度の見込みで、TSMCやUMC、GlobalFoundries(GF)などは、安定した需要を提供する分野の受注拡大を図ることで、安定した稼働率の維持を目指しているという。ただし、消費者向け製品の割合が高いファウンドリは稼働率が65~75%程度にとどまるとも見ている。

下半期については、米国の対中規制の動きを踏まえた一部の大手OEMが、米国政府の輸出規制に沿う形で供給パートナーの見直しを進めるなど、サプライチェーンの再構築が継続して進むと見られるとする。また、ファブレス各社も、注文の一部を中国外のファウンドリに振替を進めていくことが予想されるという。

なお、中長期的には、生産能力の構築と多様化が世界各地で進むため、ファウンドリ市場がより細分化されるという。同社の調査によると、近年、台湾で5、米国で5、欧州で4、中国で6、韓国、日本、シンガポールが各1つの新規ファブ建設計画が発表されている。最近の地政学的な出来事により、各国政府が半導体製造の重要性の認識を強めるようになっている。そのため、商業的利益とコスト構造とは別に、ファウンドリは特定の国の補助金政策とそのクライアントのローカルコンテンツの必要性を今まで以上に考慮する必要があるのと同時に、市場全体の健全な需給バランスを維持する必要があり、ファウンドリが将来も成功するためには、多様な製品と効果的な価格戦略が重要な要素になるとしている。