2023年の年頭にあたり、グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表 平手 智行氏は年頭所感として、以下を発表した。

2023 年、Google Cloud は日本企業のデータ活用を新たなフェーズへ

新年、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

2022 年は、クラウド業界における転換期で、Google Cloud にとっても大きな躍進を遂げた 1 年となりました。IaaS としてのクラウド利用から、クラウド導入後の付加価値となるデータ利活用や AI / 機械学習による経営判断の高度化が本格的にスタートした年でもありました。

新型コロナウイルス感染症、地政学リスク、インフレに起因する欧米諸国の金融引き締めなど、世界経済の予測が困難な「VUCA(ブーカ)」(「Volatility : 変動性」「Uncertainty : 不確実性」「Complexity : 複雑性」「Ambiguity : 曖昧性」の 4 つの単語の頭文字をとった造語)の時代においては、情勢の変化に合わせてあらゆることを迅速に変更、アップデートできる体制を整えておくために、常にデータでビジネスの状態を可視化し、その結果に基づいて経営戦略や企業方針を決定する「データドリブン経営」につなげていくことが不可欠です。

さらに、戦略的な投資をどこにしていくかを判断することも非常に重要です。多くの企業が DX に向けてクラウドの導入を検討されていますが、必ずしもインフラから DX を始める必要はありません。企業が最も必要としているのは、データを収集、分析、活用し、それらのデータをもとにアプリケーションやサービスを迅速に開発、アップデートしてお客様に届けることです。そしてそれをスピード重視で展開しなくてはなりません。

データの可視化、分析、意思決定などを支える Google Cloud は、各企業のニーズに合った効果的な IT 投資やロードマップをご提案し、時代に対応する柔軟かつアジャイルな体制の構築を支援しています。

例えば、オーケー株式会社では、単品管理や欠品管理を行うために、BigQuery にデータを集約し、必要な時間にリアルタイム データとして Looker で可視化しています。ある商品がいつどこで売れたのかや、欠品した場合もその最終売上時間と理由を深堀りすることで次のアクションに繋げているのです。また、決済サービスを展開する第三者の企業との連携も、BigQuery を用いて素早く行うことができ、利益をお客様に還元する取り組みを続けています。

また、株式会社 ipoca は小売店、特に消費期限の短い食品を取り扱うスーパーやコンビニエンス ストアにとって、大きな問題となっている値引きロス、廃棄ロス、機会ロスを解決するため、BigQuery と Vertex AI を活用して、新たな DX サービス「アスシル」を開発しました。AI 開発経験が少ない中、わずか 1 年で構築した高精度な来店人数予測 AI モデルを使って、需要予測や新規出店時の売上予測などを提供しています。

また、引き続き高度な利用が拡大するデジタル ネイティブ企業に加え、金融、物流、小売業のお客様においても高度な需要予測、効率の良い物流、サービス品質の向上、顧客体験の向上など、あらゆる業種でセキュリティとプライバシーを徹底的に担保したデータの戦略的な利活用が求められています。

Google は、ゼロトラスト コンピューティングのパイオニアであり、長年にわたりこのモデルを世界中で運用してきました。Google Cloud は、2022 年 3 月に Mandiant の買収を発表するなど、セキュリティ サービスをさらに強化しています。

JAXA 内之浦宇宙空間観測所があるロケットの町として全国に知られる鹿児島県肝属郡肝付町は、インターネットから庁内データにアクセスする際のセキュリティ上の脅威を取り除く「無害化」のために、日本の自治体として初めて BeyondCorp と Google Workspace を導入しました。町民情報や会計情報などの庁内ネットワークと、インターネットを安全に接続するための新しいインフラを構築し、どこからでも町民サービスを行えるよう、「攻め」の行政改革を進めています。

一方、企業が DX を推進する中、市場の変化に迅速に対応するために、システムの内製化を選択する動きも増えています。そこで、Google Cloud Japan では、2022 年に「Tech Acceleration Program(TAP)」の提供を開始しました。このプログラムは将来に向けて開発内製化を目指す企業が、アジャイル開発を体験できるワークショップで、すでにプログラムを体験された企業様からは高い評価をいただいています。

例えば、東海道・山陽新幹線及び東海地区在来線の運行管理システムやエクスプレス予約システムなど、約 200 のシステムを担当する、ジェイアール東海情報システム株式会社は、インフラを中心としたシステム開発・運用を行ってきましたが、内製化を強化するため、アプリ開発経験の少ないメンバーが TAP を受講しました。実際に手を動かしてシステムを実装したり、いろいろなスキルを持ったエンジニアとディスカッションすることで、短期間で多くのノウハウを取得いただきました。

ここまで紹介した Google Cloud の取り組みは、パートナー企業の皆様に支えられています。2022 年は、パートナー企業様との協力体制も大幅に拡大し、パートナー企業様とお客様の参加する Google Cloud 公式ユーザー会 Jagu'e'r の活動も活発に行われました。

さらに、Google は 2024 年にかけて日本のネットワーク インフラストラクチャに総額 1,000 億円を投資する予定です。2023 年には千葉県印西市に Google として日本で初めてとなるデータセンターを開設するほか、日本とカナダ西海岸を結ぶ初の海底ケーブル Topaz も 2023 年の開通を目指しています。

DX を進めるうえで、デジタル人材の育成は組織共通の課題です。こうした状況の中、Google は主幹事を務める日本リスキリングコンソーシアムを発表しました。

Google Cloud においても、クラウドスキルを学習するオンライン トレーニング Google Cloud Skills Boost では、コースやハンズオンラボの利用数が急増しております。また、開発者やエンジニアが情報共有しあい活躍するメンバーシップ プログラムである Google Cloud Innovators を日本でも開始し、日本独自のウェビナーやニュースレターを多くの方にご活用いただいております。今年は、さらに開発者やエンジニアのクラウドスキル構築を支援するために、日本においても Innovators Plus 特典を含む Skills Boost 年間サブスクリプションを提供いたします。

Google Cloud Japan は、Google Japan と共に One Google として、引き続き、日本への継続的な投資に全力を尽くします。

本年も引き続き、ご指導ご鞭撻を賜ります様、心からお願い申し上げます。