PKSHA Technologyは12月22日、創薬プロセスにおけるリード化合物最適化のステップにディープラーニング技術を導入し、医薬品開発期間を短縮する「薬物動態推定システム」を開発したことを発表した。2023年春をめどに医薬品業界向けサービスとして販売開始する予定。
同社は2021年4月から、13万種類の化合物ライブラリデータを教師データとして薬物動態を予測するための研究開発を開始したという。化合物を体内に摂取した際の、吸収や分布、代謝、排泄、毒性から、その化合物が薬となり得るかを左右する「ADMET」と呼ばれる物性群について、GNN(Graph neural network)という手法を用いて学習する仕組みを用いた。
研究の結果、独自のアルゴリズムによって化合物同士の複雑な関係性から薬物動態を予測し、創薬プロセスを短縮するAI(Artificial Intelligence:人工知能)ソリューションの開発に成功したとのことだ。
AIを用いた薬物動態の予測はこれまでにも検討されていたが、推定要因を推定する段階がブラックボックス化しており理解できない点が課題だった。しかし、今回開発した薬物動態推定システムは、予測に寄与する化合物内の部分構造を明示できるのだという。
新薬を生み出す創薬プロセスは、新規物質の有効性および安全性の確認や臨床試験といった多くのステップが必要であり、通常でも10年から15年ほどかかるとされる。そのため、創薬プロセスの短縮は重要な課題だ。
同社は今回、創薬プロセスの初期フェーズである薬物動態を確認できるシステムを開発し、膨大なコストがかかる実験の前に予測精度を向上させる事で、創薬コストの削減と薬剤上市までの時間短縮を支援するとのことだ。