半導体市場調査会社である台TrendForceによると、2022年第3四半期のファブレス半導体企業の売上高トップ10社の合計額は前四半期比5.3%減の373億8000万ドルとマイナス成長を記録したという。

主な要因は、ロシアのウクライナ進行、中国での都市封鎖、インフレの進行、および顧客による在庫調整などが挙げられている。

  • 2022年第3四半期におけるファブレスIC企業の売上高ランキング上位10社

    2022年第3四半期におけるファブレスIC企業の売上高ランキング上位10社(業績を公表している企業のみ対象) (出所:TrendForce)

2位に返り咲いたBroadcom

売上高トップはQualcommで、モバイル分野と自動車分野で売上高を伸ばし、RFフロントエンドの減少を相殺したこともあり、売上高は前四半期比5.6%増となり1位を堅持。一方、第2四半期2位ならびに3位であったNVIDIAとAMDはPCや暗号通貨のマイニング需要が弱含んだため、売上高はマイナス成長となり、代わってネットワーク市場のハイエンドセグメントからの需要を背景に同6.8%増と売り上げを伸ばしたBroadcomが2位に返り咲いた。また、BroadcomによるVMwareの買収は現在、関連する規制当局によって審査されているが、この取引が完了すると、Broadcomは売上高で 1位に肉薄することが期待できるようになる。

このほかプラス成長を遂げたのは6位のMarvellの同2.5%増、9位のCirrus Logicの同37.3%増のみ。Marvellはネットワークソリューションの需要が比較的安定していること、Cirrus Logicはミクスドシグナルソリューションが好調なほか、iPhone 14シリーズへの製品供給も躍進の後押しとなったという。

アジア勢はコンシューマ市場の低迷で減収に

上位10社のうちアジア勢トップの5位MediaTekは、中国のスマートフォン(スマホ)ブランドの販売不振や顧客の在庫調整などのあおりを受け同11.6%減となったほか、7位のRealtekもPC向けチップの売上減により同5.5%減、台Novatekも主軸のSoC、ディスプレイドライバともに価格、出荷いずれも落ち込み同39.9%減となった。そして10位の中Will Semiconductorもスマホ市場の停滞のあおりを受けた形で同25.8%減を記録している。

TrendForceによると、製品の軸がデータセンターやネットワーク、IoT、車載などの分野の企業は需要が堅調だが、コンシューマ分野などを軸に据えている企業が需要減退の影響を受けているとする。その大きな要因の1つであるインフレは現在も進行中であることから、同社では2022年第4四半期から2023年第1四半期にかけて、年末のホリデーシーズンでのコンシューマ製品の需要の増加は限定的との見方を示しているほか、その結果として、半導体市場の需要側が在庫調整を終えるにはしばらく時間がかかると見ており、ファブレス半導体市場は2四半期にわたってマイナス成長が続く可能性が高いとしている。ただし、ファブレス各社は、この時期を活用し、在庫レベルを下げ、キャッシュレベルを引き上げたり、製品を他のアプリケーション分野に転換するといったことを行う可能性もあり、今後の市場回復に向けた体制整備を進めるものと推測されるとしている。