半導体市場動向調査企業集団である仏Yole Gruopは、「Semiconductor Trends in Automotive 2022」レポートを発行し、その中で、小型車市場が横ばいであるにもかかわらず、自動車用半導体市場は2021年の440億ドルから年平均成長率(CAGR)11.1%で成長し、2027年には807億ドルに到達すると予測している。これは、自動車1台あたりの半導体チップの価値が550ドルから2027年には912ドルに上昇し、自動車1台に搭載されるチップの数が820個から1100個に増加することによるためだとしている。
Yole Gruopフォトニクス・センシング部門のシニアテクノロジー&マーケットアナリストであるPierrick Boulay氏は、「自動車の電動化の急速な進展により、パワーエレクトロニクス用のSiCのような新しいタイプの基板が求められており、2027年には113万枚規模となる見込みである。2027年に予想されるシリコンの3050万枚に比べればまだ少ないが、SiCはSiやGaAs/サファイアよりも速く成長するだろう」と述べている。また「ADASも重要なドライバーであり、16nm/10nmという最先端技術のマイクロコントローラユニット(MCU)がレーダーやその他のセンサ制御を含むADAS(先進運転支援システム)に入るだろう。レベル4とレベル5の自動運転では、メモリ(DRAM)とコンピューティングパワーの需要が増加する」ともしている。
電動化については、OEMの間で垂直統合が盛んになってきている。自動車製造から部品レベルまでの完全統合、自動車製造とシステム統合、自動車製造から半導体チップ設計までの統合、主要部品サプライヤとの戦略的協力/直接投資など、さまざまな方法で実現することができる。従来の自動車サプライチェーンは、競争力を維持するために、自らのポジションを徹底的に検証し、ジョイントベンチャー、M&A、新規投資や売却を通じて変革する必要があるとYole Groupは考えている。電動化により自動車産業は破壊的な転換期を迎えているが、OEMやティア1サプライヤを問わず、ほとんどのプレイヤーは半導体に関する明確な戦略をまだ持っておらず、半導体技術とそのサプライチェーンに関する具体的な専門知識は、社内外を問わず、将来への備えとして早急に必要とされる状況となっているとする。
また、「OEMはチップメーカーと直接交渉するとともに、「バッファストック」を確保する必要があるために自動車サプライチェーンの管理が変化する」とYole Group市場調査部ディレクターのEric Mounier氏は述べているほか、チップメーカーとは、数量予測や長期的な受注について、より緊密に連携していく必要があるが、1960年代にトヨタが開拓したジャストインタイム生産では、現在の地政学的状況では、少なくともチップメーカーとの間でのやりとりとしてはうまく機能しないとの見方もしめしている。