半導体市場動向調査会社である米IC Insightsによると、毎年下半期のDRAM市場は長年、ホリデーシーズン向け需要で堅調に推移する傾向にあったが、2022年は従来通りのシナリオにならなかったという。
経済状況の悪化と世界的なインフレによるPC、スマートフォン(スマホ)、その他の家電製品に対する世界的な需要鈍化が背景にあり、その結果、2022年下半期のDRAM市場の規模は前期(2022年上半期、490億ドル)比40%減の293億ドルにとどまると予測している。また、2022年通年でも前年比18%減とマイナス成長になると見ている。
2022年上半期までは順調だったDRAM市場
DRAM市場に大幅な調整の兆しが見え始めたのは2022年第2四半期後半。そこまではきわめて堅調な売り上げを記録していた。例えばMicron Technologyは、2022年会計年度第3四半期(3~5月)の売上高が前年同期比11%増となったと報告しており、迫り来る市場崩壊の影は見えていなかった。しかし、その後、同社は2022会計年度第4四半期(6~8月)の売上高ガイダンスを17%減と発表し、市場減速のサインとして注目を浴びることとなった。
実際、2022会計年度第4四半期の売上高は23%減となり、ガイダンスを大幅に下回る結果となった。また同社は、2022年後半はDRAMビット出荷数量が1%減となるとの予想を出しており、DRAM市場の減速を強調している。
3大メモリメーカーの残りの2社も2022年第3四半期について、SK hynixが前四半期比23%減、Samsungも同20%減と市場の減速の影響を受けており、こうしたDRAM市場の軟調は少なくとも2023年第1四半期まで続くと予想している。
3社ともに決算説明の席で、通常は売り上げが過熱する時期にインフレが消費者心理を抑制したこと、さらにサプライチェーンの混乱と在庫レベルの高まりも加わったことで、DRAMの市場調整が避けがたい状況となっているとしている。
好不況を繰り返すDRAM市場
過去30年にわたってDRAM市場は、目覚ましい成長を遂げる期間(例えば2017年や2021年)と壊滅的なクラッシュ に見舞われる年(2019年や2022年)が繰り返されてきた。
直近の過去4年間を見ても、2019年は前年比37%減となるも、2021年は同42%増となっている。2022年は同18%減と予測されている。繰り返される好不況の波の中、不況期を乗り越えられなかった、あるいは不況期にこそ来るべき好況期に備えた逆張りの投資をできなかったDRAMメーカー(日本のすべてのDRAMメーカーを含む)は市場からの退場を余儀なくされていき、30年前には25社以上あったDRAMサプライヤや、今や主要サプライヤ3社を中心としたごく少数のみを残すまで減少している。