同社独自の月探査ミッションへ
そして後半パートは、ランダーの開発である。
GLXPで同社が痛感したのは、やはりランダーがなければどうにもならない、ということだった。ただ、ランダーの開発には、ローバーよりも遙かに大きな資金が必要で、求められる技術分野も増える。宇宙での実績がまだ何も無いスタートアップには、やや荷が重いスケールのビジネスになってしまう。
しかし同社はそれに踏み切った。GLXP期間中の2016年に、ランダー開発の構想をスタート。2017年12月、独自の月探査ミッションを公表し、同時に、100億円超の資金調達に成功したことも明らかにした。
ランダーを開発するために、まず足りないのは人材だ。衛星や探査機の開発経験があるエンジニアは、日本にはそもそも余るほどおらず、しかも転職が期待できるのは限定的だろう。そこで同社は、海外から積極的に人材を受け入れ、開発を加速。現在、25カ国以上、200名以上という、インターナショナルな組織に成長した。
同社が開発したシリーズ1ランダーは、宇宙機としては小型であるものの、この規模のものを構想からわずか6年で完成させ、打ち上げに臨むことができたというのは、正直なところ驚きである。途中で計画の変更や遅れなどはあったものの、ここまで辿り着くことができただけでも、大きなマイルストーンだと言える。
もし月面着陸に成功すれば、日本初の快挙。そして、民間による世界初の月面着陸になる可能性も高い。まさに歴史的な偉業である。
とはいえ、1回目から簡単に成功するほど、宇宙は甘い世界ではない。民間初の月面着陸に挑んだイスラエルの「Beresheet」は、周回軌道までは到達できたものの、着陸には失敗。記憶に新しいところでは、日本初の月面着陸を目指した超小型探査機「OMOTENASHI」は、ロケットから分離後のトラブルで通信が途絶し、着陸を断念している。
今回のミッションには、ペイロードとして、JAXA/タカラトミーらが開発した超小型ローバー「SORA-Q」も搭載されており、このランダーが月面に無事着陸したら、日本初の月面ローバーまで実現するというオマケが付く。まずは打ち上げに成功し、ランダーから無事に電波が届くところを見守りたい。
打ち上げ中継はこちらから見ることができる