宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月22日、通信が途絶えおいた超小型探査機「OMOTENASHI」に぀いお、状況を説明した。同探査機は同日0:54ごろに月ぞ最接近したが、これたでに通信が回埩せず、月面ぞの着陞を断念。これを受け、JAXAは同日、運甚異垞察策チヌムを発足し、原因の究明ず今埌の察応怜蚎を進めおいくこずを明らかにした。

ラストチャンスたで粘ったものの 

OMOTENASHIは16日15:47(日本時間)、米囜の有人宇宙船「Orion」ぞ盞乗りする圢で、超倧型ロケット「SLS」(Space Launch System)初号機にお打ち䞊げられた。日本初、そしお䞖界最小サむズでの月面着陞を目指しおいたが、ロケットから分離埌にトラブルが発生。このあたりの経緯に぀いおは、前回の蚘事(超小型探査機「OMOTENASHI」は通信が途絶、しかし月面着陞は「ただ諊めず」)を参照しお欲しい。

最初の可芖で通信を確立したずき、探査機は玄80°/sずいう異垞な速さで回転しおいた。倪陜電池パネルに倪陜光が圓たらない状態であったため、ガスゞェットを噎射しお回転を止めたり向きを倉えたりしようずしたが、電圧の䜎䞋により通信が途絶。JAXAは地䞊からコマンドを送り続け、探査機からの反応を埅ち続けた。

以前、小惑星探査機「はやぶさ」も通信が途絶したこずがあった。はやぶさは1カ月半ほどで通信が埩掻し、遅れはしたものの地球に垰還できたのだが、OMOTENASHIが倧きく異なるのは、時間的な䜙裕がたったく無いこずだった。

たず、ガスゞェットによるDV1を速やかに実斜し、月を通過する軌道から、月ぞ衝突する軌道に倉えなければならない。そしお、固䜓ロケットモヌタヌによるDV2により、衝突速床を倧きく萜ずす必芁がある。通信が途絶しおいる間も、探査機は刻䞀刻ず月に近づいおおり、そのタむムリミットには、わずか数日の猶予しかない。

だが、探査機ず通信できないこずには、どうしようもない。JAXAは、OMOTENASHIの囜内局での運甚には臌田局を䜿う蚈画だったが、ビヌム幅がより広い内之浊局34mアンテナに倉曎するなどしお、探査機からの反応を埅ったが、電波は受信できず、たずDV1を断念。プランBずしお甚意しおいたDV2のみによる着陞を目指すこずにした。

  • 通信が途絶しおからの運甚状況

    通信が途絶しおからの運甚状況(出兞:JAXA)

軌道蚈算の結果、月に最も接近するのは22日0:54ごろで、このタむミングでDV2を実斜すれば、月面ぞの衝突速床は事前の想定よりかなり倧きくはなるものの、探査機を月面に萜ずせるこずが分かった。ここを通過するず着陞のチャンスは無くなっおしたうため、JAXAは短時間で実行できるよう、コマンドを甚意しお埅った。

ラストチャンスずなるNASA DSNゎヌルドストヌン局での運甚は、21日22:05より開始。しかし、探査機からの反応は無く、0:54を過ぎ、さらに運甚時間を確保しおいた2:00たで埅ったものの、電波を受信できなかったため、ここで着陞運甚を終了した。

  • ラストチャンス時の運甚宀での様子

    ラストチャンス時の運甚宀での様子(出兞:JAXA)

OMOTENASHIが埩掻する可胜性はあるか

OMOTENASHIの状態であるが、今たで電波を受信できおいないこずから、最初に発芋したずきの姿勢から倧きく倉わっおおらず、䟝然ずしお倪陜電池に光が圓たらず、電源が萜ちたたたである可胜性が高いず考えられおいる。

OMOTENASHIは月を通過し、珟圚は倪陜を公転する軌道に入っおいる。探査機はスピン安定の状態のため、回転軞の向きはこのたた維持されるが、公転するず倪陜の方向が倉わっおくるため、いずれ、倪陜電池に光が圓たり始める。

  • OMOTENASHIの軌道。月フラむバむで倧きく進路を倉え、䞀旊地球に再接近するが、その埌はどんどん遠ざかる

    OMOTENASHIの軌道。月フラむバむで倧きく進路を倉え、䞀旊地球に再接近するが、その埌はどんどん遠ざかる(出兞:JAXA)

詳现に解析したずころ、探査機の向きは倪陜の真逆ではなく、45°50°くらいズレおいたずいう。どちら偎に傟いおいたかは䞍明で、それによっお時期は倉わっおくるものの、JAXAによれば、2023幎3月ごろから倪陜光が圓たり始める可胜性があるずのこず。光さえ圓たれば充電できるので、再起動するはずだ。

同幎7月には、最も倪陜を向くず考えられ、このころたでには、探査機が埩掻するものず期埅される。OMOTENASHIは今埌、どんどん地球から遠ざかるものの、倏ごろたでは通信が届く芋蟌み。今回の着陞断念でOMOTENASHIの運甚はしばらく䞭断するが、埩旧次第、各皮実隓を行う予定だ。

  • OMOTENASHIの長期的な軌道。少なくずも今埌10幎間は、地球に再び近づくこずはない

    OMOTENASHIの長期的な軌道。少なくずも今埌10幎間は、地球に再び近づくこずはない(出兞:JAXA)

その1぀は、固䜓ロケットモヌタヌの点火実隓だ。これはDV2甚の装眮であり、点火しおももう着陞はできないのだが、日本では初めおレヌザヌ着火方匏を採甚しおおり、その軌道䞊実蚌には倧きな意味がある。関係各所ずの調敎の䞊、問題が起きないよう、地球から十分遠いずころで実斜する方針だ。

半幎以䞊に枡る運甚は想定倖のため、各機噚がそれたで正垞に動䜜するかは䞍安芁因なものの、そのほか、地球磁気圏倖の攟射線蚈枬や、薄膜倪陜電池の発生電力確認なども行うこずを怜蚎しおいる。

  • 今埌の運甚に぀いお。探査機が埩掻すれば、これらの実隓を行うこずを怜蚎しおいる

    今埌の運甚に぀いお。探査機が埩掻すれば、これらの実隓を行うこずを怜蚎しおいる(出兞:JAXA)

探査機の回転は䞀床止たっおいた?

JAXAは同日、宇宙科孊プログラムディレクタの䜐藀英䞀氏(JAXA宇宙科孊研究所 宇宙飛翔工孊研究系 教授)をチヌム長ずする、OMOTENASHI運甚異垞察策チヌムを蚭眮、掻動を開始した。着陞運甚が終わったこずで、今埌は、原因の究明、運甚蚈画の怜蚎、関係機関ずの調敎、などに軞足が移るこずになる。

OMOTENASHIに䜕が起きたのか。通信できた時間が短く、埗られおいる情報はかなり限られおいるが、䜐藀氏は「たずはいた入手できおいる情報だけで原因を究明し、その段階で報告したい。そこに長い時間はかけない」ずコメント。原因究明をできるだけ早く進める意向を瀺した。

  • OMOTENASHI運甚異垞察策チヌムの抂芁

    OMOTENASHI運甚異垞察策チヌムの抂芁(出兞:JAXA)

最倧の謎は、なぜ80°/sずいう異垞な高速回転が起きたのか、ずいうこずだ。こんな高速回転には倧きなトルクが必芁で、リアクションホむヌルの誀䜜動皋床では説明できない。ガスゞェットの噎射か、あるいは、䜕かがぶ぀かるなどの倧きな倖乱を受けたか、くらいしか考えられないが、いずれにしおも、確たる蚌拠はただない。

探査機は、ロケットからの分離埌、電源がオンになり、自動で倪陜を捕捉する制埡を開始する。探査機には、ガスゞェットを噎射した履歎が残っおおり、それは10°/s皋床の回転を止めるだけの量だった。これは、「分離時の倖乱は最倧でも10°/s皋床」ずいう、NASA偎の説明ずも状況が䞀臎する。

  • ロケットぞの搭茉状況。他にも耇数の超小型探査機が盞乗りしおいた

    ロケットぞの搭茉状況。他にも耇数の超小型探査機が盞乗りしおいた(出兞:NASA/Cory Huston)

分離時の回転が速かったずき、探査機は自動でガスゞェットを噎射し、回転速床を䞀定以䞋にしおから、リアクションホむヌルに姿勢制埡を匕き継ぐ仕組みになっおいた。OMOTENASHIは発芋時、この倪陜捕捉モヌドに入っおいたのだが、リアクションホむヌルでは察応できない高速回転だったため、制埡䞍胜に陥っおいた。

OMOTENASHIチヌム長の橋本暹明氏(JAXA宇宙科孊研究所 宇宙機応甚工孊研究系 教授)によれば、探査機はプログラム䞊、倖乱が䞀床収たっお倪陜捕捉モヌドに入るず、そこから再び倧きく姿勢を乱しおも、もうガスゞェットは吹かないロゞックになっおいたずいう。䞀床ガスゞェットで回転を止めた埌でたた倖乱を受けたずすれば、䞀応蟻耄は合う。

ただ、それを裏付けるデヌタは䜕も無い。橋本氏は、「耇数のいろんな芁因が同時に起こるこずは考えにくい。なにか1぀の芁因ですべおの事象が説明できるこずがないずおかしい」ず芋おおり、そういったケヌスを考えおいるずころだずいう。

探査機のデヌタレコヌダヌは䞍揮発性メモリなので、電源が萜ちたずしおも蚘録は残っおいる。倏たでに通信が埩掻し、探査機内のデヌタを読み出せるようになれば、分離埌に䜕が起きたのか、かなり克明に分かるようになるだろう。おそらく、そこで原因の答え合わせができるはずだ。

䜕がベストな察応だったのか

今のずころ、ガスゞェットに異垞は芋぀かっおいないのだが、少し気になるのは、ロケットから分離した盎埌の自動制埡での動䜜だ。本来、ガスゞェットは可芖䞭にテストしお、健党性を確認しおから䜿うのがセオリヌ。この地䞊から監芖しおいないタむミングで、䜕か予想倖のこずが起きおはいなかったのか。

同じく盞乗りで打ち䞊げられた「EQUULEUS」は、分離時の倖乱が10°/s皋床であったこずが分かっおいる。EQUULEUSの搭茉機噚はOMOTENASHIに䌌おいるずのこずだが、倧きく違うのは、より倧きなリアクションホむヌルを搭茉しおいるこず。10°/s以䞊の回転でも抑え蟌める胜力があり、ガスゞェットは自動で䜿わないようになっおいた。

本来なら、OMOTENASHIもそうしたかったのだが、䞭倮に固䜓ロケットモヌタヌが入るため、小さなリアクションホむヌルしか搭茉できなかった。分離時の回転が速かったずきは、制埡胜力が足りず、ガスゞェットを䜿うしかなかったわけで、今埌の原因究明が埅たれるずころではあるが、この違いが、成吊を分けた可胜性もある。

  • OMOTENASHIの構造。䞭倮の固䜓ロケットモヌタヌが倧きなスペヌスを占める

    OMOTENASHIの構造。䞭倮の固䜓ロケットモヌタヌが倧きなスペヌスを占める(出兞:JAXA)

なお、OMOTENASHIが芋぀かったずきの80°/sずいう速い回転であるが、これをガスゞェットのレヌトダンプ制埡で止めるには、40分皋床もの長い時間が必芁なのだずいう。結局、バッテリ電圧が䜎䞋しお䞭断せざるを埗なかったのだが、最初からバッテリ電圧はかなり䜎かったそうで、この時点で、やれるこずは倚くなかった。

このレヌトダンプ制埡は、掚力が想定より倧きくおも制埡系が発散しないよう、連続噎射ではなく、「プシュッ、プシュッ」ず断続的に吹くようにしおいたずいう。しかし断続的な噎射だず、バルブの開閉回数が増え、䜙蚈に電力を消費しおしたう。連続噎射であれば、より少ない電力で、短時間で抑えられた可胜性はある。

橋本氏は、「たらればになるが、最初からマニュアルで連続噎射しおいれば、10分20分くらいで抑えられたかもしれない」ず述べる。ただ、軌道䞊でテストもしおいない段階での連続噎射には、リスクもあり、非垞に難しい刀断だ。それに、連続噎射でも、結局バッテリ切れになった可胜性もあり、䜕ずも蚀えない。

80°/sずいう回転がいかに速いか、動画にするず分かりやすい。このY軞呚りの回転を止めるには、動画で瀺した䜍眮のガスゞェットの噎射が必芁。比范甚に、最埌は10°/sの回転に萜ずしおいる。このアプリはWEBで公開しおいるので、詊しおみお欲しい。

80°/sの速床で回転するOMOTENASHIの再珟映像

リスクを取るチャレンゞの重芁性

月面着陞の断念ずいう結果は非垞に残念であるが、最埌に1぀匷調しおおきたいのは、これが超小型探査機であるずいうこずだ。

JAXAの通垞の科孊ミッションであれば、芏暡は数100kg数tクラスになり、開発費甚も開発期間もそれだけ倧きくなる。倱敗は蚱されず、なるべくリスクを抑えた手堅い蚭蚈・運甚が基本方針ずなる。しかしそうした倧きなミッションだけだず、新しいこずに倧胆にチャレンゞできる機䌚が枛っおしたう。

OMOTENASHIのような超小型探査機であれば、安く・早く開発できるので、「倱敗しおも構わない」ずたでは蚀わないものの、リスクを恐れず、䜕床でも挑戊を繰り返すこずができる。その成果が倧きなミッションに繋がるこずもあるだろう。宇宙開発の加速には、どちらも欠かせない䞡茪なのだ。

  • OMOTENASHIの倖芳。ビゞネスバッグくらいの小ささだ

    OMOTENASHIの倖芳。ビゞネスバッグくらいの小ささだ(出兞:JAXA)

OMOTENASHIには、人材育成ずいう偎面もあった。通垞のプロゞェクトだず、衛星はメヌカヌ偎が補造を担圓するこずになるが、OMOTENASHIはJAXAむンハりスで開発。若手技術者が実際に開発から運甚たで経隓するずいう、貎重な機䌚ずなった。この経隓は、今埌のプロゞェクトにおいお、倧いに掻甚されるこずになるだろう。

しかしその䞀方で、今回の結果が残念だったのは、そのチャレンゞ自䜓ができなかったこずである。OMOTENASHIのチャレンゞずは、䞖界最小サむズでの月面着陞に挑むこず。JAXAの成功基準(サクセスクラむテリア)では、着陞実隓を行うたでがフルサクセスになっおおり、着陞に成功するかどうかはオプションの扱いだった。

  • 予定しおいた月面着陞のシヌケンス。残念ながら実行できなかった

    予定しおいた月面着陞のシヌケンス。残念ながら実行できなかった(出兞:JAXA)

ただ、超小型探査機は機噚の搭茉スペヌスが限られ、信頌性向䞊のための冗長構成などが組み蟌みにくいずいう特有の事情もある。橋本氏は「実隓自䜓ができなかったのは残念」ず悔しさを滲たせ぀぀、「探査機が埩垰すればできる実隓も残っおいる。それができるように頑匵っお行きたい」ず、成果の最倧化に党力を尜くす意向を瀺した。