勃興期を迎える空中ディスプレイ
何もない空中に絵が映し出される「空中ディスプレイ」。スターウォーズ エピソード4のレイア姫が「Help me Obi-Wan Kenobi, you’re my only hope」とオビ=ワン・ケノービに助けを求めるホログラフィック映像をイメージしてもらえると分かりやすいと思われるこの技術。近年、一部ではあるが、実用化されつつある。
そうした空中ディスプレイを実現する技術として、再帰反射素子を用いた空中結像(AIRR)方法が近年、実用化されてきているが、それらの多くは解像度的にはそこまで高くないという課題があったという。そうした背景から、京セラの先進マテリアルデバイス研究所のメンバーが中心になって1年半ほどをかけて開発してきたのが、自社開発の技術により小型かつ高精細(高解像度)化を実現した空中ディスプレイだという。
より高精細な空中ディスプレイの開発に挑戦
同社の空中ディスプレイ技術としては2020年9月に発表されたコンセプトカー第2弾「Moeye(モアイ)」に原理検証モデルが搭載されていたという。今回の取り組みは、それを踏まえ、より実用化を目指したプロトタイプとしてこの1年半ほどをかけて開発が進められたものとなる。
今回の目標は高精細化かつ小型化であり、その実現のために、ミラーのみを用いた独自設計手法を採用。小型ディスプレイを光源として、ミラーで反射し、空中に実像を形成することで、機構のシンプル化、つまり小型化を実現しつつ、飛び出し距離の自由度を高めたという。また、高解像なディスプレイの映像をそのまま空間に実像として表示することで、高精細化を実現したとするほか、この独自設計のミラーは光利用効率が高いため、低消費電力も図ることができるとしている。ちなみに今回の試作モデルでは自社のHUD(ヘッドアップディスプレイ)向けに作られた400ppiの高耐久液晶ディスプレイを活用したという。
今回、同社が試作した高精細空中ディスプレイは実像のサイズが3インチ、6インチ、10インチの3種類。ディスプレイ映像をそのまま空中で結像できるため、動画の追従性も十分だとしている。