京セラは9月29日、データセンターの省電力化に貢献する技術「オンボード光電気集積モジュール」を開発し、512Gbpsの伝送帯域を実現したことを発表した。

  • オンボード光電気集積モジュール

    京セラが新たに開発した512Gbpsの伝送帯域を実現したオンボード光電気集積モジュール

ハイパースケーラー、いわゆるハイパースケールのデータセンターなどでは100万台を超すサーバが設置されており、消費電力の増大が問題となっている。光ファイバーの活用で、省電力化が期待されているが、システムボードとしてプリント基板が用いられる都合上、金属配線が必要で、そこで抵抗による電力損失が生じることとなる。特に、CPUなどと光電変換のための光モジュールまでは、配線長としては長く、その損失を抑制するためにCPU周辺部、もしくはCPUパッケージ内への光電変換モジュールの搭載が求められており、これまでも研究レベルなどではそうした技術が披露されてきた。

今回、京セラが開発したオンボード光電気集積モジュールは、CPUの近辺に光モジュールを持ってくることで、電気と光を高密度に集積することを可能としたもの。主な用途としては、サーバラック内のシステムボード間の接続をはじめとする短距離通信が見込まれている。

  • 開発されたモジュールが狙うのはラック内のシステムボード間接続などの短距離通信

    開発されたモジュールが狙うのはラック内のシステムボード間接続などの短距離通信

その特長は大きく2つ。1つ目は高密度実装と小型化による省電力化の実現。モジュールサイズを小さくすることで、プロセッサ近辺に配置することで、金属配線を削減し、システム全体の消費電力低減を可能とする。同社では、「もともと開発してきたガラスセラミック基板技術を活用したほか、制御用マイコンなどの集積における電気回路の工夫や冷却を行うための放熱技術の工夫なども盛り込むことで実現した」(同社 研究開発本部 先進マテリアルデバイス研究所の赤星知幸氏)とする(光インタフェース部で必要とされるシリコンフォトニクスは今回のモジュールでは他社製を採用とのこと)。

2つ目は高速大容量の実現。PCI Express(PCIe) Gen5に対応し、32Gbps×16レーンで512Gbpsの伝送帯域を実現するという。基本はPCIeだが、InfinibandやFiber Channel、OIF CEI、100GbEなど、さまざまな信号(32Gbpsまでのもの)に対応するとしている。同社がPCIeを主眼に置いている背景として、PCI SIGが長年にわたって、PCIeの規格として、金属配線では伝送速度が高速になればなるほど、アイパターンが開かない(通信品質が悪い)という課題を認識し、光ファイバーの活用を模索してきていることが挙げられる。

  • 開発されたモジュールの伝送特性

    開発されたモジュールの伝送特性

また、その消費電力としては400G光モジュールの場合、OSFPで15W、QSFP-DDで12Wのところ、開発モジュールでは、16レーンのフル稼働で9Wと、モジュールレベルでの省電力化を果たしたとするほか、プロセッサとの距離が短くなり、その分、電力損失を既存システムと比べて低減することができることから、同社としてはシステム全体として半分以下に消費電力を低減することができると見ていると説明する。

  • 既存のモジュールとの消費電力比較

    既存のモジュールとの消費電力比較

モジュールサイズは43.5mm×8.1mmと小型で、そこに4組の光ファイバアレイ(8チャネルマルチモード光ファイバ)が組み合わされる形となる。また、信頼性試験としても、一般的な光モジュールに適用される試験はすべてクリア済みということで、すぐにでも製品化が期待されるところであるが、「性能や特性は今回の開発品で出せたが、実際に利用した際の課題の洗い出しなどが残っている」としており、今後はパートナーと連携し、実証実験を進め、商用化に向けたさまざまな課題の洗い出しを進めていくほか、モジュールの量産に向けた製造コストの最適化やサプライチェーンの構築などを進めていくとしている。

  • QSFPと開発されたモジュールの比較

    QSFPと開発されたモジュールの比較

なお、今回はプロセッサ近辺に配置する「On-board Optics(OBO)」のモジュールだが、将来的には2.5D/3D実装を活用したプロセッサ一体型の「Co-Packaged Optics(CPO)」に向けた開発を進めていくとしているほか、今回のモジュールについても、16レーン品以外にも8レーン品や4レーン品、Pluggable Module品などといった製品ラインナップの拡充も図っていき、第1弾製品について2023年度の下期には商用化を果たしたいとしている。

  • 製品ラインナップも拡充させていく予定としている

    製品ラインナップも拡充させていく予定としている