京都セミコンダクター(京セミ)は1月19日、ODTR向けAPDとして「KPDEA003-T」を発表した。これに関して同日、オンラインで記者説明会が開催されたのでその内容をご紹介したい(Photo00)。
KPDEA003-Tは、InGaAsの高感度アバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photo Diode)である。APDとは光電素子に逆電圧を掛ける事で、光子の衝突によって発生した電子が加速され、それが他の原子とぶつかり、さらに多くの電子を喚起するという仕組みで、あたかも雪崩(Avalanche)を起こすようということからこの名前がある(Photo01)。
この結果として微弱な光であっても大きな電位変化を起こせるという事で、高感度フォトダイオード向けに広く利用されている。このAPD、可視光帯~短波長帯向けにはSiベースのものが使われるが、光ファイバーを利用した長距離通信向けではInGaAs素子を利用したものが多用されている。
今回同社が発表したKPDEA003-Tは、その光ファイバーを利用した通信向け、というよりはその光ファイバーの検査を行うOTDR(Optical Time Domain Reflectometer:光時間領域反射率計)向けの製品である(Photo02)。
OTDRは、光ファイバーの一端からまず光パルスを送り込み、それがファイバー内を伝搬する過程で反射して戻ってくる光の強度や時間を精密に測定する事で、その光ファイバー内の損失状況とか損失が生じている位置、種類などを測定できる機器である。昨今のデータセンターだと、最大で3km(Facebookの事例だが、Googleも似たような話がある)ものケーブルを敷設する場合があり、ちゃんと敷設できたかのチェックなどを行う際にはOTDRは欠かせない測定装置となっている。
このOTDR向けのAPDの場合、
- 暗電流が少ない事(10nA未満)
- 高倍率(高感度)であること(M=30~50)
が求められる製品特性(Photo03)という話であり、具体的にはPhoto04の様な設計目標を立てて開発したところ、αサンプルで目標を上回る成果が得られた、としている(Photo05)。
これを達成できた理由として挙げられているのがこちら(Photo06)。
具体的には、特に素子構造に関して詳細は当然企業秘密ということで開示されなかったが、その素子構造をかなり研究して最適な構造を実現できたこと、それともう1つがパッケージ技術で、同社はパッケージの構造に関しても知見が深く、これを生かすことで高感度を維持できるパッケージを提供できた、としている。
ちなみに製品はSMF(Sigle Mode Fiber)が一体化されたモジュールの形で提供され(Photo07)、量産出荷は今年の7月末を予定。これに先立ち4月末にはOTDRベンダーへのサンプル出荷を開始予定との話であった。またマーケットシェアに関しては、2023年度中にOTDRマーケットのシェアの50%程度を握りたい、という話であった。