積水化学と日立製作所は、9月20日、材料開発におけるMI(マテリアルズ・インフォマティクス)の推進に向け協創を開始することを発表した。
MIとは、統計分析などを活用したインフォマティクスの手法により、材料開発を高効率化する取り組みのこと。これまでの材料開発は、研究者の経験や勘に大きく依存し、実用化までに非常に長い時間と費用を要していたという。
今回の協創では、材料に関するデータとAIなどのデジタル技術を駆使することにより、短期間で効率的に材料特性や知見を見出すことが可能なMIの推進に取り組み、新材料開発の加速や研究開発の効率化・高度化を目指す。日立製作所のLumada(顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称)で展開されるさまざまなソリューションのほか、先行研究として進める先進技術も幅広く活用し、積水化学の実業務においてその有用性を検証するという。
具体的には、MIに必要となる材料開発のためのナレッジや実験データを社内外から自動で収集・整理・蓄積・統合し、最大限活用できる環境を構築し、また、実験ワークフローをサイバー空間上で表現したデジタルツインの構築により、材料開発の領域におけるサイバーフィジカルシステムの有用性の実証を進めていく。これらの検証は、積水化学の機能性材料に関する研究を対象に開始する。
協創の内容としては「CMOSアニーリングを活用した材料特性の最適条件探索による、材料開発の高度化」「AIを用いて材料開発知識の整理を自動化し、多様な知識を蓄積するナレッジベースを構築」「実験デジタルツインの構築と実験データ収集の自動化による材料実験業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化」の3つが挙げられている。
「CMOSアニーリングを活用した材料特性の最適条件探索による、材料開発の高度化」では、日立製作所が開発した量子コンピュータを疑似的に再現するCMOSアニーリングを、材料開発分野に適用し、その効果検証を行う。多くの選択肢の中から最適な条件の組み合わせを高速かつ高精度に予測可能なアニーリング技術の活用により、積水化学が得意とするMIを用いた複雑な配合設計を加速し、新材料の開発サイクルのさらなる短縮や高度化を目指すという。
「AIを用いて材料開発知識の整理を自動化し、多様な知識を蓄積するナレッジベースを構築」では、日立製作所独自のAIを用いて、社内外のさまざまなデータの整理を自動化、さらに国や研究機関が公開するデータベースと統合して、研究者が着目する多様な知識を蓄積する「材料開発統合ナレッジベース」を構築し、その有用性を検証する。既存データの整理だけでなく、公開データとの統合により不足情報を自動的に補完するほか、AIを用いて正しい情報を整理できたかなど不確実性の評価も行い、情報の信頼性向上を図る。
「実験デジタルツインの構築と実験データ収集の自動化による材料実験業務のDX化」では、材料開発の現場で行われる実験ワークフローをサイバー空間上に再現し、各プロセスの実験データを関連づけ、実験デジタルツインを構築するほか、実験業務の自動化・リモート化に向けて、実験で用いられる計測装置と実験デジタルツインの連携に向けた検討も行い、材料開発の効率向上に関する効果を検証する。