昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)は、半導体製造で用いられる「CMPスラリ」の生産能力と評価機能を増強することを目的に総額200億円投資して、山崎事業所および同事業所の勝田サイト、台湾の連結子会社Showa Denko Semiconductor Materials Taiwan(SDSMT)における工場の新設や生産・評価設備の導入を行うことを発表した。

半導体用CMPスラリ市場は、半導体需要の高まりを背景にに2019年以降、年率10%を超える成長を遂げており、今後も半導体メモリの3次元化や、ロジック半導体の高性能化に向けたトランジスタ構造の複雑化などによる研磨層数の増加などから、さらなる成長が期待されている。

同社のCMPスラリは、研磨時に半導体基板上に生じる傷(研磨傷)が少ない点を強みとして、世界2位のシェア(金額ベース、富士経済調べ)を有しているという。中でも独自の微粒子合成技術で開発した微細な砥粒を用いた「ナノセリアスラリー」などのセリアスラリ(酸化セリウムを砥粒として用いたCMPスラリ)は、さらなる研磨傷低減を実現できる点が評価され、セリアスラリ市場で世界トップシェア(金額ベース、グローバルネット調べ)を有しているとする。

今回の設備投資の内容としては、SDSMTでは、最先端デバイス向け半導体ロジックの回路形成工程で用いられるナノセリアスラリーの生産能力を2023年1月より拡大するほか、2023年7月をめどに、高研磨速度と低研磨傷の両立が可能なセリアスラリの能力増強も行うことで、台湾の顧客ニーズに対応するとしている。一方、山崎事業所では、高精細な半導体デバイスの需要増加に伴い、研磨傷低減のニーズがより強まっていることを受け、2022年3月に最先端の欠陥検査装置などを導入しており、より基板上の細かな研磨傷分析を可能とし、次世代デバイス向け低研磨傷スラリの開発を促進するとともに、既存製品のさらなる品質改善を行える体制を敷いたとしている。また同事業所の勝田サイトにおいては、従来のセリアスラリに比べて、さらなる高研磨速度と研磨平坦性の両立を可能にしたセリアスラリなどの能力増強を行う予定で、これらの能力増強により、同社グループにおけるCMPスラリの生産能力は約20%増加する見込みだという。

なお同社は2020年、SDSMTや韓国の連結子会社Showa Denko Electronic Materials Koreaにおいて総額110億円を投資して、CMPスラリの生産設備増強や工場新設を行っており、今回の生産能力および評価設備のさらなる増強により、今後も成長が見込まれる最先端半導体メモリや半導体ロジックへの次世代製品の生産および開発を強化するとともに、伸び筋製品への積極的な投資を通じてグローバルトップシェア事業を拡大するとしている。