電源やトランスなどを手掛ける台湾のデルタ電子(Delta Electronics)は、同社の関連会社でGaNパワー半導体の開発を手掛けるAncora Semiconductorが資金調達ラウンドとして、デルタ電子、ローム、Siウェハを手掛けるSino-American Silicon(SAS)、ASUS傘下の電源管理IC設計会社であるuPI Semiconductorの4社を引き受け先とする第三者割当増資契約を締結したと発表した。

それによると増資額は総額で4億5600万NTドル(約21億円)としているが、各社の出資比率などは明らかにされていない。素材、デバイス製造、適用先がそろった形での投資となっており、デルタ電子では、AncoraのGaNパワー半導体開発が加速することが期待されるとしている。

Ancoraは2022年7月に設立されたばかりのベンチャーで、登記上の資本金は7億NTドル、払込資本金は4億NTドルで、デルタ電子グループの持ち株比率は8割を占めているという。

ロームが関係を深めるデルタ電子

実はロームとデルタ電子は2022年4月にも電源システム用のGaNパワーデバイスの開発・量産における戦略的パートナーシップの締結を発表している。この協業は、ロームのパワーデバイス開発・製造技術とデルタ電子の電源開発技術とを組み合わせ、幅広い電源システムに最適な600V耐圧GaNパワーデバイスを共同で開発するというもので、今回の出資はその協業の一環だと見られている。

Ancora社長のTK Shing氏は、「GaNは、スイッチング周波数の高速化、効率の向上、エネルギー消費の削減という利点を備えたパワーエレクトロニクスの未来を拓く半導体である。GaN技術のエコシステムは、新たなアプリケーションが出現するにつれて急速に進化している。ローム、SAS、uPIを戦略的パートナーおよび投資家として迎えられてうれしい。また、電力および熱管理技術のリーダーであり、スマートな省エネソリューションのグローバルプロバイダーであり、私たちの親会社であるDeltaのコミットメントにも感謝している。この強力な提携により、基板材料、IC設計、アプリケーション、およびシステムソリューションの強力なパートナーとのエコシステムを確立し、前例のない性能価値を約束するGaN技術の採用を促進することができる」と述べている。

また、「Ancora製品群には、Deltaの厳しい認定システムの下で証明された優れた品質、信頼性、耐久性を備えた、業界をリードするGaN ディスクリートコンポーネント、SiPおよびSoCが含まれている。高効率パワーエレクトロニクスのコアコンピタンスを活用する幅広いスマート省エネルギーソリューションを提供するというDeltaの取り組みは、さらなる勢いをもたらし、Ancoraの長期的な成長を後押しする。この提携と資本調達により、Ancoraは生産能力を向上させ、消費者向け電子機器、通信および自動車アプリケーションにおけるGaNデバイスの需要の高まりに対応できるようになると期待している」とも述べており、最終的な目標として「GaNの性能を最大化して電力技術の革新を加速し、エネルギー効率に基づく持続可能な開発の実現に貢献すること」を掲げている。