大阪大学(阪大)は9月10日、省エネルギー半導体材料として期待される「窒素極性窒化アルミニウム上窒化ガリウム(N極性GaN on AlN)」の大面積・低コストな製造に成功したことを発表した。
同成果は、阪大大学院 基礎工学研究科の林侑介助教、同・藤平哲也准教授、同・酒井朗教授、三重大学大学院 工学研究科の三宅秀人教授、米・コーネル大学のZexuan Zhang氏、Yongjin Cho博士、Huili Xing教授、Debdeep Jena教授らの国大共同研究チームによるもの。詳細は、米国科学振興協会が刊行する「Science」系のオープンアクセスジャーナル「Science Advances」に掲載された。
次世代パワーデバイスとして、高い電力変換効率が期待期待できる材料の1つが「窒化ガリウム(GaN)」であり、これまでのGaNトランジスタは、「窒化アルミニウム(AlN)」との混晶である「窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)」との界面に蓄積される高移動度電子「2次元電子ガス」を利用することで高性能を実現してきたという。
2次元電子ガスの密度は、GaNとAlGaNの電気分極差に応じて上昇することが知られており、通常、AlGaN中のAlN比率は20%で十分に高い導電性を得ることができるが、次世代の第6世代移動通信システム(6G)においては、高速通信の需要がさらに高まることが予想され、導電性のさらなる向上が試みられてきており、その中でGaNをAlN基板上に結晶成長させる「GaN on AlN」は、AlN比率を100%にすることで高密度の電荷蓄積を実現できるアプローチとして注目されているという。
GaN on AlNが性能を発揮する結晶面には「金属極性面」と「窒素(N)極性面」の2つあり、N極性面は酸素不純物が起点となって結晶成長中に容易に金属極性へ反転してしまう問題があったことから、これまでの研究開発は安定な金属(GaもしくはAl)極性面に限定されていたという。ただし、N極性GaN on AlNは、高速パワーデバイスとして高い性能が予想されていることから、N極性AlNを安定に結晶成長させるための技術開発が求められていたという。
そこで研究チームは今回、まず、2インチ径の大面積・低コストなN極性AlN下地基板を開発することに挑戦。具体的には、大口径サファイア基板上に安価なスパッタ法でAlN薄膜を堆積させ、対面式アニールを施すことで高品質な下地基板の作製が可能となり、高価なAlN単結晶基板を使用せずにN極性GaN on AlNを実現できるとする。