NECは9月5日、宇宙空間で使用する光通信システムとして10Gbpsで動作する光通信機向け技術を開発し、その成果を盛り込んだプロトタイプの製造を行ったことを発表した。

光通信の宇宙システム利用についてはデータ中継システムに加え、静止軌道衛星ベースの汎用衛星通信放送システムの高速化(HTS:High Throughput Satellite)化や、低周回軌道衛星ベースの衛星コンステレーションにおけるネットワーク構築手段として注目を集めており、今回の技術開発も、HTSにおける衛星-地上間フィーダーリンクへの適用を念頭に置いて進められてきたものだという。

  • 開発された10Gbps光通信機

    開発された10Gbps光通信機 (出所:NEC)

この10Gbps光通信機は、開発段階において宇宙環境で動作保証がされた部品が少なかったため、地上システム向け光部品および高周波部品の宇宙システムでの適用を目的とした新たな選別手法ならびに実装方法を開発。 先行して開発された光衛星間通信システム「LUCAS」向け同様に1.55μm帯を採用し、静止軌道衛星-地上間、静止軌道衛星-低軌道衛星間に相当する約4万kmの長距離システムへの適用に向け、最適な誤り訂正符号化技術を採用するなど、受信感度改善のための各種施策を適用し、回線成立条件の緩和につなげたという。

また、HTSにおけるマルチーユーザRFリンクとの親和性およびその先のネットワーク化、また地上通信システムとのシームレスな接続に向け、地上システムで標準的に使用されるイーサネットをインタフェースとして採用したともしている。

なお、開発された10Gbps光通信機は、2023年度打ち上げ予定の「技術試験衛星9号機(ETS-9)」に搭載され、宇宙環境での動作確認が行われる予定で、その軌道上での動作確認の結果をもとに、長期信頼性の改善とともに、小型化・低コスト化を並行して進め、製品化につなげたいと同社では説明している。