東北大学は8月23日、次世代の熱マネジメント技術への応用が期待されている、磁性原子が梯子状に配列したスピン梯子系銅酸化物「La5Ca9Cu24O41(LCCO)」を配向成膜する技術を開発することに成功したと発表した。
同成果は、東北大大学院 工学研究科 応用物理学専攻 藤原研究室の渡辺祥太大学院生(研究当時)、同・寺門信明助教(研究当時:JSTさきがけ研究者兼任)、同・藤原巧教授、同・大学院 工学研究科 技術部の宮崎孝道博士、同・川股隆行助教(現・東京電機大学 准教授)らの研究チームによるもの。詳細は、表面や界面、ナノ構造とその応用に関する全般を扱う学術誌「Applied Surface Science」に掲載された。
電子デバイスは高集積化によって性能の向上が達成されてきたが、それは同時に発熱量の増大も招いていた。排熱がうまくいかないと機器の誤作動や故障につながってしまうため、放熱や断熱、遮熱を制御する熱マネジメントが重要な課題となっている。
スピン梯子系銅酸化物は、その名の通りイオンが梯子状に並んだ層状構造を持つ。その梯子面に沿って熱が高速で移動することから、その熱流束を電気や化学的な外場によって制御できると考えられており、熱の方向や伝わり易さを時間的・空間的に制御するための次世代熱マネジメント技術への応用が期待されている。
このような背景のもと、スピン梯子系銅酸化物の中でも最大の室温熱伝導率(鉄と同程度)を示すLCCOに注目してきたのが研究チームだという。しかし、デバイス作製において重要な成膜プロセスであるスパッタリング法を用いると、梯子の向きがバラバラになってしまい、スピン梯子系銅酸化物のメリットである高熱伝導性が失われてしまうという課題があったという。
スパッタリング法には、基板の種類と温度、薄膜のもととなるターゲット物質、ガス種やその圧力など、数多くの操作パラメータが存在していることから、研究チームは今回、LCCOの配向構造を生み出す成膜条件を詳細に調査することにしたという。