そこで研究チームは今回、まずはグレースケールで観察される像の中から転位の位置を特定しカウントするシステムの構築を目標に開発を実施。具体的には、転位の可視化には、偏光に伴う結晶特有の複屈折特性(レタデーション)を利用した偏光観察の技術と、Mipoxが独自開発したリアルタイム位相演算処理技術が用いられた。観察される像はグレースケールによるコントラストとして形成されるため、これまでの技術では背景と転位のコントラストの切り分けが困難だった。しかし今回は、独自の画像処理フィルターを開発することにより、貫通転位が形成するコントラストを選択的に抽出することが可能になったという。

  • 転位カウントシステムによる貫通転位の抽出の様子

    転位カウントシステムによる貫通転位の抽出の様子 (出所:MipoxプレスリリースPDF)

また一方で、転位カウントシステムのカウント結果を活用し、ウェハ全体の転位の数密度やひずみの分布を直感的にわかりやすく表示するヒートマップ表示機能の開発が進められた。こちらは、ウェハ中の転位密度や表示領域内のひずみの強弱をカラースケールで可視化する仕組みだという。

  • 4インチSiCウェハに含まれる貫通転位の数のヒートマップ表示

    4インチSiCウェハに含まれる貫通転位の数のヒートマップ表示。赤が貫通転位の多い領域、青が貫通転位の少ない領域。ウェハ内での転位の分布がわかりやすく可視化されている (出所:MipoxプレスリリースPDF)

これらの技術は、シリコンウェハのほか、単結晶試料(SiC、GaN、ダイヤモンド、AlN、サファイアなど)の内部の転位、ウェハ内部のひずみ、エピウェハ内部の転位などの観察に対して活用可能だという。

研究チームでは、今回の成果について、パワー半導体ウェハの検査コストを低減するとともに、利便性や業務効率の向上に貢献するものとしているほか、Mipoxの「XS-1Sirius」に実装された、今回の成果をベースにした「転位カウント・ヒートマップ表示」機能は、ウェハに含まれる転位の数を95%以上の検出率で測定することに成功したとしており、これらの新機能を撮像とマルチタスクで処理させることで検査時間を短縮し、ウェハの全面検査において3インチで約4分、4インチで約7分、6インチで約15分という高速検査能力を実現したとしている。

  • 「XS-1 Sirius」

    今回開発された転位カウントシステムとヒートマップ表示機能が実装されたMipoxのSiC結晶転位高感度可視化装置「XS-1 Sirius」 (出所:MipoxプレスリリースPDF)

なお、NEDOは引き続き、「官民による若手研究者発掘支援事業(若サポ)」による支援を行い、若手研究者の育成と半導体結晶検査装置の機能向上を通じた半導体製造技術の発展に貢献していくとしている。