NXP Semiconductorsは、ドイツで開催中の「embedded world 2022」にあわせて「S32 Automotive Platform」向けに「S32Z/S32Eプロセッサ」を発表した。これに関する説明会が6月23日、NXPジャパンによって開催されたので、その内容をお届けしたい。

NXPはここ数年、車載プラットフォームとして新しくS32シリーズプロセッサを投入している。その最初のものが2017年から発表されたS32Kシリーズであり、ついで2018年には自動運転向けにS32Sシリーズが発表、2020年にはConnectivity向けのS32Gシリーズが発表されている。今回発表のS32Z/S32Eは、これに続く第3弾の製品で、こちらは車体制御向けとなっている(Photo01)。

  • ちなみにこの図ではADAS/自動運転向けはS32Rとなっている

    Photo01:ちなみにこの図ではADAS/自動運転向けはS32Rとなっているが、これはレーダプロセッサである

さてそのS32Z/S32Eであるが、バックグラウンドとして車両向けのシステムは昨今Domain FocusとZone Focusの流れが急速に進んでいるとした(Photo02)上で、こうしたDomain&Zoneのリアルタイム制御向けに今回投入されるのがS32Z/S32Eである(Photo03)。

  • Software Define Vehicleの流れ

    Photo02:Software Define Vehicleの流れ、それと配線の削減とかを狙ったものではあるのだが、Zone Focusという話が出てくる前からECUで配線の削減をという話はあったのに、未だにさっぱり減っていない(どころか増えている)のはどうしたものか

  • 充電制御向けに見えてしまうが、それだけではない

    Photo03:この図だとまるで充電制御向けに見えてしまうが、それだけではない

具体的なアプリケーションはこんな感じ(Photo04)で、リアルタイム制御が必要なところ全般に使える汎用製品となっている。

  • Photo04:リアルタイム性に加え、車両の安全性にも関わる要素が多いので、機能安全への対策も必要となる

    Photo04:リアルタイム性に加え、車両の安全性にも関わる要素が多いので、機能安全への対策も必要となる

さて今回はS32Z2とS32E2の2つのシリーズが発表されたが、これに加えて将来はS32Z1シリーズが投入される事になっており、また将来製品としては5nmプロセスで製造の製品がここに投入されるとしている(Photo05)。

  • 5nmへの移行は、今年5月のCOMPUTEXにおける基調講演で発表された

    Photo05:S32ZとEの違いは次で。5nmへの移行は、今年5月のCOMPUTEXにおける基調講演で発表された

  • S32Z1にもCortex-M33は搭載される

    Photo06:ちなみにS32Z1に関してはCortex-M33も搭載されるが、Cortex-R52は最大2対4個となる

さてその内部構造であるが、製品そのものはS32Z2が最大2ダイ、S32E2は最大3ダイ構成のマルチチップ構成である。共通するのはプロセッサダイで、ここは最大4対8個のCortex-R52と1対2個のCortex-M33、それと様々な周辺回路やアクセラレータから構成される。

ここでプロセッサブロックに入っているNon-volatile Memory(NOR Flash)は別ダイ構成で、これが0~64MBまでラインナップされている。そんな訳でS32Z2はFlash無しだと1ダイ、Flash入りだと2ダイになるが、S32E2はこれに加えてData Flashや3.3V SAR ADC、5V I/Oなどを集積したアナログICがさらに別ダイ(55nmプロセスで製造)として搭載される形になり、これで最大3ダイという構成になるそうだ。

またプロセッサそのものはLockstep動作をするため、これでISO26262 ASIL-Dに対応する事も可能である。Photo04でも出て来たが、車体制御の中でも安全処理とかブレーキ/ステアリング/ECSなどは安全性の担保が最重要であるから、それに向けた構成になっているわけだ。またプロセッサを直接アプリケーションで占有するのではなく、HyperVisorを介して仮想化プロセッサを利用する(Photo07)事で、さらに冗長性を高める事も可能となっている。

  • Hypervisorは複数のものに対応予定という話であった

    Photo07:Hypervisorは複数のものに対応予定という話であった

ちなみに同社は電動化ECU統合開発環境としてGreenBoxと呼ばれるプラットフォームを提供中である。このスライド(Photo08)に出てくるのはGreenBox 2であるが、新規デザインにはGreenBox 3を推奨しているそうだ

  • Simulinkによる運転のシミュレーション

    Photo08:これはSimulinkで運転のシミュレーションを行い、これに応じてのECUの動作をMonitor Aで監視するというもの

それはともかく、このGreenBox 2はS32Z2と同じく8個のCortex-R52コアを搭載するS32S24が実装されており、これを利用して実際にHypervisorを利用して動作するデモも同時に行われた(Photo09)。

  • Core 2を物理的にクラッシュさせても、BMSとかHAVCなどは継続動作できるというデモ

    Photo09:Core 2を物理的にクラッシュさせても、BMSとかHAVCなどは継続動作できるというデモ。これはHypervisorを介して処理を別のコアに割り振る事が可能だから成せる業である

ちなみに、すでにS32Z280とS32E288という2製品は、特定顧客へのサンプル出荷が開始されているとの事であった。