物質・材料研究機構(NIMS)と早稲田大学(早大)は6月3日、これまで細孔を開けることが難しかった炭素ナノシートに無数の孔を開ける手法を開発し、多孔性炭素ナノシートの合成に成功したと発表した。
同成果は、NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 メソスケール物質化学グループの山内悠輔グループリーダー(豪州・クイーンズランド大学・教授/早大・客員上席研究員/JSTERATO山内物質空間テクトニクスプロジェクト・研究総括兼任)、早大、クイーンズランド大、華東師範大学、南京航空航天大学などの研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する主力学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。
ゼオライト、活性炭、シリカゲルなどに代表されるナノ空間を有する多孔質材料は、環境、エネルギー、光学、医療、エレクトロニクスなどの幅広い分野での応用が期待されている。
ナノ多孔体は、高い比表面積と大きな細孔容積のような独特の特徴を持つ。その中で、有機種を基本ユニットとする空間物質、または錯体化学における有機配位子と金属イオンの「配位結合」による「多孔性配位高分子」(PCP)/「金属有機構造体」(MOF)は、ガス吸着、分離、分子認識などとしての応用に最適とされる。
しかし電極触媒、キャパシタ、二次電池、燃料電池などへの応用を考えると、原子が共有結合または金属結合によって結合されており、化学的な安定性と高い電気伝導性を有している無機固体で骨格を形成した新規な多孔性物質・材料を開発する必要があったという。そこで研究チームは今回、有機金属構造体を新しい手法で剥離して炭素化することで、多孔性を有する炭素ナノシートを合成することにしたとする。