デンソーは6月1日、自社の手掛ける半導体の強みを紹介するWebサイトを開設。併せて半導体戦略に関する説明会を開催し、半導体需給ひっ迫への対応状況や技術戦略に対するスタンスなどについての説明を行った。
半導体の供給確保に向けた5つのステップ
同社では、取引先との連携による5つのステップで半導体の供給確保に取り組んでいるという。STEP0として、東日本大震災の経験を踏まえ、リスク在庫を保有する取り組みを、半導体の仕入れ先である商社とともに協力して開始。今回の半導体不足に対しても有効に機能しているとするほか、代替品への切り替えなども進めることで、在庫確保を進めており、特にリスク在庫管理に関しては、デジタルトランスフォーメーション(DX)化を進めることで、枯渇しうる日算定リードタイムの短縮などを図っているとする。
また、半導体デバイスメーカーとの間で10年レベルの技術や数量の動向を共有することで、3か月程度の短期の発注に加え、年単位での中長期を見据えた発注の取り組みも進めているとするほか、地政学的リスクの把握を進め、想定される事態に対する策を講じたり、取引先も含めた工場などの防火対策・耐震強化なども進めているとする。
車載半導体に関する基本戦略
同社は自動車分野で必要とされる車載半導体を現在、CASE時代を迎え、電子プラットフォームの変化、電動化の拡大、運転支援の進化の3つの方向性があると認識。高い演算性能を必要とするロジックとしての「マイコン&SoC」、必要とする大電流を制御するための「パワー&アナログ」、そして運転支援を実現するために高度化が求められる「センサー」の3つの分野に分けて、それぞれの潮流に沿った戦略を採用しているという。
アクチュエーター制御などはマイコン、クロスドメインはSoCで対応
ロジック半導体の最先端プロセスとしては5nmや3nm世代が登場し、スマートフォン(スマホ)やデータセンターなどで活用が進められている。しかし、車載半導体としては、基本的にはそこから数世代前の枯れたプロセスが通例として活用されてきた。主に、そうした枯れたプロセスの方が故障率を下げられるといったことや、コスト的な面などが考慮されてのことである。
また、ルネサス エレクトロニクスの車載マイコンなどでもそうだが、単なるロジック部を搭載したデジタルマイコンではなく、組み込みフラッシュを内蔵したフラッシュマイコンが使われており、現在、量産品としては28nmプロセスが最先端という位置づけとなっている。
そうした自動車に必要とするマイコンやSoCの仕様はデンソーが戦略的な仕様を提案し、マイコンベンダやSoCベンダが設計を進め、TSMCやUMCといったファウンドリが製造を担当するという戦略的な連携を構築。また、車両の電子・電動化が進む中にあっても、アクチュエーター制御ニーズそのものはなくならず、そうした末端の制御については引き続きマイコンを、センサフュージョンのようなクロスドメインの機能の処理についてはさまざまな機能を搭載できるSoCをそれぞれ活用するという方向性で開発を進めているとする。
どちらも高度なロジック半導体の実用化、そしてその安定調達を前提としており、そのためになるべく1つの仕様でさまざまな機能をカバーできるようにすることで標準化を推進しているとするほか、製造についても標準プロセスを活用することで、複数の拠点での生産を可能とする方向としている。
実際に生産については、2022年に入り、TSMCが熊本県に設立するJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)への少数持ち分出資を発表したほか、4月にもUMCと三重県のUMCの日本拠点「USJC(ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン)」にてパワー半導体(シリコンIGBT)を300mmウェハで生産するラインを設置する協業を発表するなど、国内での安定調達に向けた動きを加速させており、長年言われてきた製品供給期間や調達の考え方が全く異なる半導体業界と自動車業界の文化の違いを超える取り組みも進めているとする。