西日本電信電話(NTT西日本)、パソナグループ、事業構想大学院大学、日本電信電話(NTT)社会情報研究所、地域創生Coデザイン研究所の5者は2021年7月に「地域創生推進コンソーシアム協定」を締結した。

同コンソーシアムが4月25日に「共創で実現する地域創生の"いま"と"これから"」と題して、第1回地域創生推進フォーラムを開催した。本稿では同フォーラムから、デジタル庁統括官の村上敬亮氏がデジタル田園都市国家構想について語った基調講演の模様をお届けしたい。

  • デジタル庁統括官 村上敬亮氏

    デジタル庁統括官 村上敬亮氏

「いつかはクラウン」がうたわれた1980年代は、人口増加期であり消費の拡大が見込めるため、製造業を中心とした長いサプライチェーンに依存する「ものづくり中心の経済」が形成されていた。所得水準も向上するため製品単価も徐々に高騰していた時代だ。

しかし、現在は人口減少期にある。消費量が必然的に減るだけではなく、多様性が認められる現代においては必ずしも高級車ばかりが売れるわけではない。こうした時代においては購買から利用へと消費行動が遷移し、シェアリングエコノミーが発生している。「ものを作れば売れる」時代ではなくなった現在について、村上氏は「デジタル技術を活用して共助のビジネスモデルを積極的に活用した新たな生活経済モデルが必要」と述べた。

  • バリューチェーンが短くなり「短くて速い」事業モデルが求められる

    バリューチェーンが短くなり「短くて速い」事業モデルが求められる

地方に目を向けると、需要があるにもかかわらず、適切なサービスが提供されていない場面が見られる。免許返納後の高齢者が多い一方で経営に苦しむバス会社や、健康情報を取得できるウェアラブル端末を持つ一方で、地域の病院との連携が取れずにウェアラブル端末のデータを使った医療サービスを受けられない患者などがその例だ。

同氏はその背景について、「複数のサービスがデジタル基盤を共用するためのコストが問題」と指摘する。

例えば、ウェアラブル端末を複数社が提供し病院のシステムも複数社が提供しているような場合には、これを同一のフォーマットで連携するためのシステム構築が課題となる。さまざまな生活ニーズや価値観に寄り添うサービスをデジタル技術によって実現するためには、複数のサービスが積極的に協力し合う、共助のビジネスモデルを土台としたデジタル生活基盤の再構築が必要になる。

  • 共助に基づくデジタル基盤連携が重要だという

    共助に基づくデジタル基盤連携が重要だという

一方で、「短くて速い」ビジネスが求められる現代においては、特に都市部の大企業での苦悩が顕著なようだ。バックオフィスのコストが高い大企業はベンチャー企業と比較して、低額の新サービスを迅速に提供するのが難しい。こうした課題感は1960年代のアメリカでも見られたようで、東海岸の巨大な金融街とシリコンバレーを中心とする西海岸のスタートアップの対比からもその様子がうかがえる。

また、副業やに拠点居住、多様な教育や医療などを希望したり、新しいビジネスへのチャレンジを望んだりする創造的な人材にとっては、都会の暮らしや大企業における働き方は閉塞感を与える要因にもなっているという。

そこで村上氏は、自由で活力のある暮らしとビジネスの実践の場を地域でこそ実現できないかと訴えた。ワーケーションなどの機会を提供しながらも、チャレンジを望む都市部の人材が地域で活躍できる環境を提供することを勧めている。

  • 地域でチャレンジできる環境が必要とのことだ

    地域でチャレンジできる環境が必要とのことだ

続けて、村上氏は「デジタル田園都市国家構想の答えに王道はない」としながらも、サテライトオフィスなどの整備を一つの方法として紹介した。このサテライトオフィスは密度と包摂性の高い空間であることが望ましいとしている。地域の補助金などを活用しながら創造的な人材を1カ所に集め、化学変化を促す場所作りが必要なのだそうだ。「場合によっては事業よりも先につながりを作る場所があっても良いのでは」と、同氏は補足している。

また同様に、データ連携基盤を作りながらスタートアップを育てる仕組みも必要だという。地域の中で新しいビジネスが生まれた場合には、市民をお客様にするのではなくクラウドファンディングなどさまざまな形態で事業の輪に加える必要があるとのことだ。

「デジタル田園都市国家構想の1つのゴールは、それぞれの地域がスタートアップのエコシステムと接点を持てるようになること」と村上氏。

デジタル田園都市国家構想においては、地域のエコシステムの中で育ったスタートアップが、地域住民の参加を得ながら街のウェルビーイング向上に寄与できるサイクルが求められる。そのためには、人材と産業を地域に誘致する施策を強化し、デジタル技術を中心とした共助のビジネスモデル確立が今後の課題となりそうだ。

  • 地域とスタートアップ企業の接点づくりが求められる

    地域とスタートアップ企業の接点づくりが求められる

  • デジタル田園都市国家構想の取り組みイメージ

    デジタル田園都市国家構想の取り組みイメージ