熊本大学は4月21日、自己組織化する特徴を持つ分子群「チオール分子」を、金基板上で自己組織化させずに特定の位置に吸着させることに成功し、将来的に原子や分子1つずつ積み上げて、物質や構造を任意に作り上げていく「ボトムアップ」式の構造制御につながる手法を見出したと発表した。
同成果は、熊本大 産業ナノマテリアル研究所の吉本惣一郎准教授らの研究チームによるもの。詳細は、英王立化学会の主力学術誌「Chemical Science」に掲載された。
炭素骨格から成る、原子1つ分の厚さの2次元シートであるグラフェンは、電子デバイスや燃料電池の分離膜材料、センサ研究など広く展開されており、より高度な加工を行うことでさらなる新機能の発現が期待されている。しかし、このグラフェンに、たとえば規則的かつ均一なサイズの穴を空けるといったことは困難とされている。
一方で、ナノサイズで構造が規定された「ナノグラフェン」は、その形状やサイズを有機合成によって制御可能であることから、研究チームは今回、ナノグラフェンの中でも低分子量であり低対称性構造を有する「オバレン」に着目し、その単分子膜の構造の理解とチオール分子の化学吸着を試みることにしたという。