半導体市場調査会社である台TrendForceによると、2022年第2四半期のNANDフラッシュメモリの価格は5~10%上昇する可能性があるという。

背景には、ロシアのウクライナ侵攻やPCやスマートフォンなどといった最終製品のインフレに加えて、買い手、売り手ともに在庫を抱えた状況が続くなど値下げ要因があるものの、2022年1月下旬に生じたキオクシアの四日市工場ならびに北上工場における原材料の汚染事故が回復までに1か月ほどを要し、その間、少なくともWestern Digitalのみで「主に2020年第3四半期と第4四半期に約7EB分の生産減少が発生する」としていることから、今後しばらくはNANDの供給が低下する見込みであり、この影響が大きな値上げ要因となるとTrendForceでは見ている。

  • NANDメモリのタイプ別2022年第1四半期および第2四半期契約価格の前四半期期比増減率の予測

    NANDメモリのタイプ別2022年第1四半期および第2四半期契約価格の前四半期期比増減率の予測 (出所:TrendForce、2022年3月)

NANDアプリケーション別としては、クライアントSSDに関しては、ロシアのウクライナ侵攻により、PCメーカーが在庫戦略を保守的なものとする一方、キオクシアの事故の影響もあり、サプライヤ側が積極的な価格戦略を採用していることから、同四半期の価格上昇は前四半期比3~8%増となるとTrendForceは予測している。

また、エンタープライズSSDに関しては、サーバとハイパースケールデータセンターの注文が増加する一方、キオクシアの事故により、リードタイムが伸びることを危惧したクライアントは、Samsung Electronicsならびに米Solidigm(SK HynixがIntelのNAND事業を段階的に取得するために設置した企業)に供給を依頼。ただし、PCIe 4.0製品の供給が限られているため、サプライヤは強気の姿勢を見せており、同四半期におけるエンタープライズSSDの価格は同5〜10%ほど上昇すると予測している。

eMMCに関しては、新型コロナの感染拡大に端を発する在宅勤務や遠隔学習が終了の方向にあるため、テレビをはじめとする消費者向け製品の需要が引き続き弱まるため、低容量/中容量のeMMC製品の需要が減少しているという。キオクシアでも低容量品となる2D NANDの供給は、原材料の汚染による影響を受けていないが、2D NANDの生産能力を段階的に削減するサプライヤもいることから、市場の全体的な取引環境は、この事故によって変化したままであり、サプライヤ各社は、比較的低容量のeMMC製品の値上げをすることで利益を維持しようとしていることから、同四半期におけるeMMC契約価格は、同3〜8%上昇すると予測している。

UFSに関しては、諸々の要因からスマホなどの重要なアプリケーションの需要が弱まっていることに加え、キオクシアの汚染事故の影響を受けて、3D NANDの出荷数量が大幅に減少しており、その規模は需要の減少を超える勢いとなっているとのことで、同四半期の価格は同3~8%ほど上昇すると予測されている。

NANDウェハに関しては、フラッシュドライブやメモリカードなどの製品需要は弱いものの、これらはサプライチェーンにとって優先度の低い製品であり、かつキオクシアの事故がNANDウェハの供給に影響を及ぼしているため、同四半期の価格は、同5%〜10%上昇すると予測している。