キオクシア(旧東芝メモリ)の株式の過半数を握る特別目的会社を主導する投資ファンドの米ベインキャピタルが、東芝の買収を検討しているとロイターやブルームバーグなど複数の米国メディアが3月31日付で報じている。1年前にも同様の話題が取りざたされたが実現せず、再挑戦するようである。

東芝の筆頭株主であるエフィッシモ・キャピタル・マネジメント(シンガポールに拠点を持ち、旧村上ファンド出身者が運営する投資ファンドで東芝の9.90%の株式を所有)が、3月31日に関東財務局に提出した変更報告書に「米ベインキャピタルが東芝株を公開買い付け(TOB)した場合、保有株をすべて応募する方針である」旨の記述があったという。エフィッツモは、その意向をすでにベインに伝えてあり、両社の合意が取れている模様であるものの、ベインは「現時点でTOBに関して何ら決定した事実はない」とコメントしているという。エフィシモは、東芝を2分割して半導体事業を分離独立させることに反対しており、一方で東芝株式の非公開化に賛成する「モノ言う株主」とされている。

膠着状態となっているキオクシアのWestern Digitalへの売却

ベインキャピタルが東芝の買収に成功した場合、キオクシアと東芝の半導体事業を含めた再編の可能性も出てくることが考えられる。

キオクシアに対してはNANDメモリの開発・製造パートナーであるWestern Digitalが買収に意欲を燃やしているといわれているが、昨秋以来、交渉は膠着状態にあるとされている。その理由の1つは、キオクシアの株式の4割を握る東芝の経営混迷で先行きが不明な点が挙げられており、その株式譲渡について意思統一できるような状態にはないという。NANDメモリの国産化を進める中国政府がWestern Digitalによる買収を承認しない可能性も高いと業界関係者は見ている。

Western Digitalは、キオクシアの四日市および北上工場の製造棟で使用されているすべての製造装置をキオクシアと折半出資しており、5割の所有権を持っている。2022年4月より建設から始まる北上工場の第2製造棟K2でもキオクシアとWestern Digitalは同様な契約を結ぶ交渉中といわれていることから、キオクシアがWestern Digital以外に売却された場合、東芝メモリの売却時と同様に製造装置の使用に関してWestern Digitalとの間に問題が生じる可能性がある。

外資主導の買収は改正外為法や各国の競争法など課題も多く、「東芝の株式非公開化に向けては解決すべき課題が多い」(ベイン)ようなので、東芝とキオクシアの売却は、ともに簡単には行きそうにはないと思われる。