ENEOSホールディングス傘下のJX金属は3月10日、今後の米国における半導体用スパッタリングターゲット事業の強化および新規事業展開のため、米国アリゾナ州メサ市に約26万m2の土地を取得することを決定したと発表した。同社の主要顧客である先端半導体メーカーが相次いで米国で工場の新設・増設に向けた投資を行っていることを受けた形の決定だという。

同社は現在、Intelの量産拠点であるアリゾナ州チャンドラー市に半導体用スパッタリングターゲットの下工程を担う拠点(JX Nippon Mining & Metals USA)を置いているが、今回、新たに同拠点のおよそ6倍の広さとなる約26万m2の土地をチャンドラ北部に隣接するメサ市に取得することを決定した。

顧客の生産拠点に近いことに加え、大規模な半導体工場の増設や新設が予定されている米国において十分な広さの用地を確保することで、今後さらに半導体用スパッタリングターゲットの生産能力を顧客ニーズに応じて機動的に拡大していくとしている。

投資額は120億円を予定しており、2024年度以降の稼働開始を予定している。

同社は半導体用金属成膜材料のターゲット材で世界シェア約60%を握っており、磯原工場(茨城県北茨城市)で金属インゴットの生産や切断、圧延を行い、アリゾナの子会社で最終加工を行っている。

  • JX金属

    JX金属の新拠点が設置される予定のアリゾナ州メサ市の位置 (出所:JX金属Webサイト)

北米で新たに先端事業展開も計画

また同社は今後、新設拠点を半導体用スパッタリングターゲットの製造拠点としてだけでなく、新規事業展開のための用地としても活用し、北米における先端事業展開を計画しているという。これについて、同社は「2040年JX金属グループ長期ビジョン」で掲げる「技術立脚型企業」への転身に向けた施策を推進する戦略の一環だとしている。

なお、アリゾナ州には、Intelが自社製品のための半導体工場に加え、IFS(Intel Foundry Service)の本格展開に向けた最先端ロジックファブを2棟建設中であるほか、TSMCも先端ロジック半導体工場を建設中で、世界中から装置・材料メーカーが次々とアリゾナ州進出や増設を決めている。米国政府も半導体メーカーだけではなく、装置・材料メーカーにも補助金を出して海外からの誘致活動を推進しようとしており、同地での半導体関連投資が活発化している。