熊本県企業誘致連絡協議会主催のオンラインセミナーが2月28日に開催され、TSMCとソニー、デンソーの合弁会社であるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)の代表取締役社長を務める堀田祐一氏が、JASMの概要を明らかにした。

同氏は2022年1月にソニーグループからJASMに移籍し、社長に就任した人物。2015~2018年にかけてソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(SSM)熊本テクノロジーセンターでの勤務経験があり、熊本勤務は今回が2度目だという。また、この1年間は、厚木に本拠を置くソニーセミコンダクタソリューションズにてTSMCとの交渉にあたってきたとする。

JASMの所在地は現在、熊本市内となっている、これはあくまでもTSMCが会社設立の登記のために設置したもので、近く熊本県菊池郡菊陽町の工場建設現場近くに仮事務所を設置し、工場竣工後の本社所在地は工場内となる予定だという。2021年12月の登記時はTSMCの100%子会社だったが、2022年1月にソニーグループの孫会社にあたるソニーセミコンダクタマニュファクチャリングも少数持分出資し、TSMCとソニーの合弁会社となっている。いずれデンソーも少数持分出資することになっているが、出資手続きが未完了のため2月28日時点ではまだ株主となっていないという。

すでに決まっている主な計画は、以下のとおり。

  • 工場建設場所:熊本県菊池郡菊陽町第2原水工業団地
  • 建設開始:2022年第2四半期(4-6月)
  • 生産開始:2024年年末までに
  • 生産プロセス:28/22nm(プレーナー構造)および16/12nm(FinFET構造) (デンソー参画決定前は28/22nmのみ)
  • 月間生産能力:5万5000枚(300mmウェハ) (デンソー参画決定前は4万5000枚)
  • 設備投資額:86億ドル(約9800億円) (デンソー参画決定前は8000億円)
  • 従業員数:1700人(デンソー参画決定前は1500人)

このうち従業員については、300人は台湾TSMCから出向、200人余りをソニーからの出向で賄い、全体の7割を新規採用者(新卒と中途採用)とアウトソースで賄う予定だという。

現在のJASM社員は、堀田社長のほか、もう1人、ソニーから移籍した取締役の2名のみで、このほか台湾のTSMC社内でさまざまな準備をしている人たちが加わる予定だという。

工場は、2023年第3四半期末(9月)に竣工予定で、第4四半期から装置の搬入を始め、2024年に立ち上げを行い、同年後半から年末までに生産を開始する計画となっている。装置搬入が始まる2023年第4四半期までに1200人ぐらいの従業員をそろえる予定だが、2023年に向かって段階的に授業員を募集して行き、早期に採用した社員は台湾で技術研修してもらうことになっている。すでに募集を開始しているが、職種は、個別プロセス、プロセスインテグレーション、デバイス、製造、設備(製造装置)、ファシリティ、IT/FA、品質・信頼性、そのほかとしている。

堀田氏は、JASMの課題として以下のような事柄を挙げて、地元自治体やサプライチェーン関係者の協力を求めた。

  • 採用育成:操業開始に向けた短期間の人材獲得と稼働開始後の継続的な人材獲得が必要
  • 交通:現在、近隣の多数の工業団地へマイカーによる通勤時に交通渋滞が生じており、JASM操業開始までに対策が必要
  • 住宅:台湾から300人および国内からの移住者への住宅確保
  • 宿泊・食事:工場建設時および装置立ち上げ時の取引先対応
  • 教育:台湾から赴任する社員の家族の教育機関(インターナショナルスクールなど)
  • 調達:国内調達優先で5割はそうしたいが、調達先の確保について商談中
  • 輸送:国内外からの調達材の物流の確保
  • 環境:環境に十分配慮した工場設計の実施、特に水回収・リサイクルシステムの導入、地下水涵養の取り組み

なお、同セミナーでは、堀田社長のJASMの概要紹介に先立ち、TSMCジャパンの代表取締役社長である小野寺誠氏がTSMCの紹介を行っており、TSMCのミッションについて、「長年にわたりグローバルなロジックIC産業のために信頼性の高い技術と生産を提供することである」と説明し、JASMもこのミッションに従って操業することになるとした。