新エネルギー・産業技術総合研究開発機構(NEDO)は2月25日、次世代パワー半導体(SiC、GaN)の高性能化・高効率化の実現や次世代グリーンデータセンターに関する技術開発を通じてデータセンターの省エネ化「次世代デジタルインフラ構築プロジェクト」の研究開発事業に着手すると発表した。
同プロジェクトの実施期間は2021年度から2030年度までを予定しており、予算総額は1376億円とかなり巨額の研究開発プロジェクトになる見通しだ(実施途中での見直しも予定されている)。
NEDOの担当者によれば「同プロジェクトは、グリーンイノベーション基金事業の1つとして実施され、脱炭素化を実現するために、さまざまな電機機器に使用されているパワー半導体や、データセンターの省電力化を図るために必要な要素技術の開発を目指すもの」という。
具体的には、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)製などの次世代パワー半導体の高性能化・高効率化を図ることで変圧器などの電力損失を50%以下に低減し、省エネ化を目指す研究開発プロジェクトだ。
近年では、日本や欧米などの主要自動車メーカーは、現在主流のガソリンエンジン搭載車ではなく電気自動車(EV)の実用化を進めている。この中で、日本の自動車メーカーは電気自動車に加えて、ハイブリッド車や燃料電池車(FCV)などを加えた電動車(xEV)の事業化を進めていくとしている※ 。
次世代デジタルインフラ構築プロジェクトでは、次世代の電動車などの省エネ化を実現するための要素技術としても、SiC製やGaN製の半導体の高性能化が目標の1つになっている。
すでに、日本ではSiC製とGaN製の半導体の高性能化を目指して、2015年には名古屋大学に未来材料・システム研究所を設け、その中に未来エレクトロニクス集積研究センターを設置し、産業技術総合研究所やトヨタ自動車などとの共同研究や連携研究などを進めてきた。
このような大学などが進めてきた基盤技術開発を基に、今回の次世代デジタルインフラ構築プロジェクトでは、さらなる高性能化を図るとともに、従来のシリコン(Si)パワー半導体と同等の低コスト化を目指すためにウェハの製造技術の開発も行っていくという。
同時に、データセンターでの省エネ化・大容量化・低遅延化を実現するため、光通信と電子通信を組み合わせた「光電融合技術」の開発を進める研究開発を実施する。この光電融合技術は、ここ20年間ほど、東京大学などを中核に研究開発を進めてきた基盤技術である。
これらの次世代グリーンデータセンターに関する技術開発を行い、現在と比較して40%以上の省エネ化を目指していくという。
今回の次世代デジタルインフラ構築プロジェクトに参加する企業は、次世代パワー半導体デバイス製造開発事業では、ローム、東芝デバイス&ストレージと東芝エネルギーシステム、デンソー、オキサイド(山梨県北杜市)などの8社が参加する。
次世代データセンター技術開発事業では、富士通やNECなどの7社が参加し、研究開発を進める予定だ。
※文中注釈
次世代デジタルインフラ構築プロジェクトでは、EVだけでなくトヨタ自動車が販売している「プリウス」や、日産自動車が販売している「e-Power」型車などの小さなガソリンエンジンと組み合わせたハイブリット車などのxEVも対象としている点が特徴的だ。