Samsung Electronicsは2021年12月29日、「中国西安の状況について」と題する異例の声明を発表した。

この声明は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が続いているため、中国西安のNAND工場の操業を一時的に調整することを決定した」というもので、同社の最優先事項である従業員とその家族の健康と安全を保護するというコミットメントに沿う形で決定されたとしている。また、この取り組みに際し、グローバルな製造ネットワークの活用を含め、顧客に影響を与えないよう必要な措置を講ずるともしている。

西安市の防疫当局は12月9日の集団感染発生にともなう新型コロナの感染拡大を受け、12月23日午前0時より都市全体に封鎖令を出した。西安のSamsungの3D NAND工場については、中国当局から、日常生活に必須の業務(Essential Work)と認定され、操業継続のライセンスを受け、同社も「従業員は都市封鎖前に会社の寄宿舎に移動しており、消耗部材の在庫も十分ある」と説明し、操業を継続する姿勢を見せていた。

しかし、西安市民に対する厳しい外出禁止令が長引いていることから、クリーンルーム内で働く人員確保が徐々に困難になりつつあることが判明してきたことから、通常の操業を継続していくことは困難と判断したようである。

2020年には武漢のYMTCにおいても同様の問題が発生し、中国中央政府の指示で工場閉鎖まではいかなかったものの、最少人数で、高温拡散炉などの製造装置の電源を落とさぬように保守点検を中心とした少量生産を行う事態が生じていた。

Samsunの西安工場で生産される3D NANDの規模は、同社の全NANDの40%を超える月25万枚程度で、世界のNAND出荷額の15%強を占めると言われている。Samsungとしても韓国外にある唯一のメモリ工場であるだけに、今後の製品出荷数量の減少による市場の混乱が懸念される。韓国業界関係者の間からは、完成品の在庫がかなりあり当面の供給に支障はなく、今回の操業調整によりNAND不足懸念が生じ、市場価格も上昇する見込みから、損失は限定的との見方が出ている。ただし、都市封鎖が長引けば世界的なNAND不足問題が発生する懸念があることに留意する必要があるだろう。