立命館大学、千葉大学、科学技術振興機構の3者は12月20日、荷電処理が不要の「自己組織化エレクトレット」(SAE)を、MEMSに集積した「エレクトレット型MEMS環境振動発電素子」の開発に成功したと発表した。
同成果は、立命館大 理工学部の山根大輔准教授、千葉大 先進科学センターの田中有弥助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、応用物理学を扱う学術誌「Applied Physics Letters」に掲載された。
MEMS技術を利用した小型の環境振動発電素子は、小型無線IoT端末の電源としても期待できることから、活用が期待されており、中でも半永久的に電荷もしくは電気分極を持つ誘電体であるエレクトレットによるMEMS環境振動発電素子(エレクトレット型)は、他方式より低周波数かつ高出力電力密度のため、環境振動発電に有利とされており、さらなる小型化・高性能化・生産性向上などが求められている。
今回、研究チームは、常温の成膜プロセス(真空蒸着法)のみを用いて、有機EL素子用の材料である「TPBi」からなるSAEをMEMS内部に形成する独自技術を提案し、発電に成功したという。
SAEは、自発的に配向する極性有機分子からなり、荷電処理なしで表面電位が発現するのが特徴。今回の技術では、エレクトレット形成を室温成膜のみで行えることから、既存の半導体プロセスに組み込みやすく、エレクトレット型と電子回路を同一基板上にモノリシック集積化(ワンチップ化)することも可能になるとする。
なお、SAE表面電位は膜厚に比例するため、SAE厚膜化により発電量のさらなる増大も可能なため、今後のMEMS環境振動発電素子の小型化・高性能化・生産性向上が加速されることが期待できると研究チームでは説明しており、将来的には、無線IoT環境センサなどの一般生活品に組み込まれる可能性もあるとしている。