宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月10日、東京2020大会の空域統制に災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)を導入して運用支援を行うことで、警察庁が主導する警備体制の構築に貢献したことを発表した。

これまで大規模イベントの空域統制では、警察・消防などの政府機関機、民間機関機、不審機など、旅客機用に整備された管制システムではカバーできない空域を飛行する機体を、リアルタイムで監視することは困難とされていた。

先般開催された東京五輪では、こうした課題を受けて、警察庁からG20大阪サミットや即位行事で実績のあったD-NETの導入および運用支援に関する要請があったため、今回の協力が実現したとのことだ。

同ネットワークの導入によって、500機以上の機体の運航計画を画面上で事前に短時間で確認できるようになるとともに、飛行中のリアルタイムな監視や、許可を受けずに飛行している不審機の早期発見が可能になったという。

  • 空域統制所におけるD-NETの利用状況のイメージ (C)JAXA

飛行前日に各機関から送られる運航計画に対して、警備への影響や運航安全の確保などの観点から、確認作業や調整作業を実施する。こうした作業は、同ネットワークの導入によって従来の半分程度の時間で実施できるようになり、作業者の業務量が低減されるとともに、問題点の見逃しといったヒューマンエラー予防の効果も得られるとしている。

  • 運航計画調整をしている様子のイメージ (C)JAXA

また、同ネットワークを用いることで、各会場周辺の飛行制限を競技の準備や開催のために必要な最小限の時間に抑えることができ、航空交通への影響を最小にしながらも空域を有効に活用することが可能となった。

  • 競技会場周辺に設定された飛行制限空域の例 (紫線で囲まれたエリアが飛行制限空域) (C)JAXA

さらに、政府機や五輪放送機構などの優先度が高い機体に、同機構の機上システムを用いることで、より詳細な運航状況の把握を可能にするとともに、民間企業も含めた連携体制の構築によって、500機以上の機体の監視を可能にしたという。

今回の東京五輪において、警察庁と民間企業の協力の下で政府機と民間機の運航情報を同ネットワークで共有化する体制が構築されたことによって、軍用目的を除く民間分野においては、これまでになかったような運航管理および情報共有システムとなったとのことだ。今回の成果は、災害時や警備時に課題となっていた政府機と民間機の安全かつ効率的な空域の共有のための技術や体制の確立につながるとしている。