米Lattice Semiconductorは5月11日(米国時間)、「Lattice Automate」というFA向けとなる新たなソリューションスタックを発表した。また、これに関する説明会がオンラインで開催されたので、その内容をご紹介したい。

Latticeはこのところ、FPGAそのものだけでなく様々なソリューションスタックを相次いで提供している(Photo01)

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    Photo01:sensAIは2019年5月に、mVisionとSentryは2021年3月に、それぞれVersion 2.0が発表されている

今回は第4弾として、Facory Automation(FA)向けのソリューションスタックを提供する形だ。なぜこのマーケット向けにというのは明白で、ここの成長率が非常に高い&市場規模も大きく、まだ同社が参入する余地が十分にあるからということになる(Photo02)

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    Photo02:もっともこれらを全部カバーするのは同社の体力的に厳しいものはあるので、いくつか選びながらの参入になりそうではある

ただこのマーケットは競合も多い(FA向けMCUはすでに膨大な数の製品が出荷されている)訳であるが、差別化要因は高性能・低消費電力の他高信頼性、予知保全などが挙げられている(Photo03)

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    Photo03:もっとも予知保全に関してはまだ機能というか要件的に熟しているとは言い難いので、このあたりは微妙な気もする

そのLattice Automateのスタック構成がこちら(Photo04)。将来的にはまた機能が追加されるかもしれないが、現時点でのLattice Automateはモータ制御を中心にした構成で、これにAIベースの予知保全や産業向けEthernet、セキュリティ周りを組み合わせる形である。

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    Photo04:モータ制御は主にNexusシリーズのFPGAでカバーし、セキュリティ周りはMachXO3Dでカバー、という形になるようだ

このうちモータ制御については完全にFPGA Fabric側での制御を想定しているという(Photo05)

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    Photo05:モータ制御MCUも各社色々工夫を凝らしているので、一概に右下の比較が成立するとは限らない(モータの種類にも依存する)が、ラフに言えば通常のMCUの2倍の数のモータを1つのFPGAで制御できるので、特に多軸制御のロボットなどで、BOMコストや消費電力削減に効果的とする

リファレンスキットがBLDCモータ向けで構成されているが、実際にはBLDC以外にも多くの種類のモータ制御に対応しており、またセンサモータ/センサレスモータのどちらも利用可能との事。このあたりはPropelで具体的なロジックを組んでゆく事になるそうだ。

これと組み合わせるのが予知保全の話であるが、今回TensorFlow Liteを初めてサポート。これでモータの稼働状況のモニタリングをすることで予知保全が可能になる、という話であった(Photo06)

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    Photo06:Lattice Automateの説明ページによれば“AI-based analysis of Motor waveforms”だそうで、モータ側センサーからのFeedback、もしくはDriver出力のモニタの変動を監視する模様だ

システムとしては、PDM Data Collectorやセキュリティ保護を担うCentral Main Controller(Photo07中央上)の下に、複数のモータ制御用FPGAがぶら下がるという構図になる模様だ。

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    Photo07:この際に各々のFPGAはIndustrial Ethernetで繋がるという形になるらしい

セキュリティ対策に関しては、すでにLattice Sentryを利用してレジリエントサーバを作る事が可能になっており、これを組み合わせる事で堅牢なシステムが構築できるとしている(Photo08)

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    Photo08:今のところSentry 2.0程の堅牢さは必要ないと見ているためか、MachXO3DベースのSentry 1.0で十分という形での推奨になっている

開発環境としては、肝心のモータ制御部はLattice Propelで構築でき、その他の部分はRISC-Vベースで開発すればよい、というのが同社の説明であった(Photo09)

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    Photo09:予知保全に関してはTensroFlow LiteがLattice Propelで対応される様になったので、後は学習済みモデルだけ用意すれば実装できる、という訳だ

ちなみに先のPhoto04に戻るが、最上位には(これまでの同社のソリューションスタック同様に)カスタム設計サービスが提供される。Propelに用意のない特殊なモータ制御方式の開発や、あまり一般的でないFieldBusのサポートなど、ちょっと手間がかかる作業に関しては、同社のパートナーによるカスタム設計サービスでカバーされるという話であった。

ところで同社は米国時間の6月23日、新しいCertusPro-NXという汎用FPGAを発表することをアナウンスしている。今回のLattice Automateも、当然この新しいCertusPro-NX上で動く事が期待できそうだ。