TSMCは4月22日に開催した取締役会において、車載半導体の増産に向け成熟プロセスへの設備投資として28億8700万ドルを投じることを承認したと発表した。

台湾メディアによると、TSMCは中国南京市にある同社の南京工場(Fab16)で車載用28nmプロセス品の生産能力を拡張するための投資であると説明しているという。2022年下半期に生産能力の拡充がなされ、2023年半ばまでに月産4万枚の体制となる予定だという。

台湾は現在、深刻な水不足に見舞われており、TSMCは生産の一部を南京工場に移すのではないかといううわさが台湾半導体業界内で広まっていたが、今回の投資についてTSMCはそれを否定、既存工場の中で南京工場にだけクリーンルームに空きスペースがあり、ここで車載半導体の増産体制を構築するのが、もっとも早く立ち上げられると判断したためだとしている。

  • TSMC Fab16

    モダンなデザインのTSMC南京工場(Fab16) (出所:TSMC)

また、2020年秋には台湾の一部メディアが、TSMCが南京工場に新たなファブを増設することを決めたと報じたが、その件に関しては「まだ具体的な計画を発表する段階ではない」としている。

TSMCは新たなファブの建設地について、顧客のニーズをはじめとする多くの要因を考慮する必要があり、すべての可能性を排除しないとしている。今回の件はファブの新設ではなく、既存ファブの有効活用だが、今年に入り、日本に3DIC材料研究所設置を発表した際や、EUから誘致の話があった際にも、「ファブ建設場所の選択に関しては、顧客のニーズを含む多くの要因を考慮する必要がある。TSMCはすべての可能性を排除はしないが、現時点では具体的な計画はない」と答えていた。

今回は、ファブ増設ではなく、既存ファブの有効活用だが、いずれ需要がさらに増せば南京でのファブ新設の可能性はあり得るだろう。