ASMLは1月20日(欧州時間)、2020年通年の業績を発表した。それによると売上高は前年比18%増の139億7900万ユーロ、純利益は同37%増の35億5400万ユーロ、粗利益率は48.6%だった。露光装置の販売台数(新品)は前年比33台増の236台で、このうち31台がEUV露光装置であった。

また、2020年第4四半期の業績は前四半期比7.5%増の42億5400万ユーロ、純利益は同27%増の13億5100万ユーロで、売上高についてはアナリスト予測や同社の事前ガイダンスを上回る結果となった。また2021年第1四半期の売上高も39億~41億ユーロと予想しており、これもアナリスト予測(35億ユーロ台)を上回る数値となっている。

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    ASMLの2019年と2020年の売上高の内訳 (出所:ASML)

ASMLの社長兼CEOであるPeter Wennink氏は、第4四半期の売上高が事前ガイダンスを上回ったことについて「主に追加のDUV露光装置の出荷とアップグレードによるものである。また、同四半期は9台のEUV露光装置を出荷し、8台のEUV露光装置の売り上げがあがった。さらに、同四半期の予約額は、EUVの11億ユーロ(6ユニット)を含めて42億ユーロとなった」と説明。通年で31台のEUV露光装置を出荷したことも含め、売り上げと収益の両面で力強い成長の年となったとした。

2021年についても、強いロジック需要とメモリの回復により、年間を通して成長が見込まれるとしている。

EUVは台韓で争奪戦化?、中国はDUVを増設へ

ASMLでは、2021年の売上高の成長率を10%台前半としているが、地政学的な制約や輸出規制が強化されなければ上方修正される可能性があるとしている。特に中国の動きが注目で、特定企業(SMIC)へのEUV露光装置の出荷はオランダ政府が輸出許可を出していないが、DUV露光装置の中国への輸出は許可されていることもあり、YMTCをはじめとする中国の新興半導体メーカーが増産に向けて調達数を増やすことが予想されているという。

また、2020年の売上高を地域・国別でみると、台湾36%、韓国31%、中国18%、米国9%、日本3%、EMEA3%となっており、前年比で台湾がシェアを減らす一方で韓国がシェアを伸ばしている。これは、Samsung ElectronicsがEUVの本格適用を始めたためと見られる。2021年はSK HynixもDRAM製造にEUVを採用する予定となっており、韓国勢と台湾勢の間でEUV露光装置が奪い合いになる可能性が高い。

100台目となるEUV露光装置を出荷

同社は業績のほか、2020年の製品・ビジネス別のハイライトの紹介も行っている。100台目のEUV露光装置が出荷され、同年末までに世界中で2600万枚のウェハがEUVで生産され、そのうちの900万枚が第4四半期に生産されたという。

また、アプリケーション事業としては、第4四半期に3nmプロセスの要件を満たすことを可能とするレジスト内オーバーレイおよびフォーカス計測を提供する「YieldStar 385」の初出荷が行われたという。従来システムと比較して、より高速なステージとより高速な波長切り替えを実現しており、複数の波長を用いた高精度オーバーレイ測定とツールマッチングを可能にしたという。

さらに3×3ビームと高速ステージテクノロジーを備え、シングルビームシステムよりも最大600%高い生産性を提供するマルチビームシステム「eScan1000」の出荷も行われたという。