台湾のハイテクメディアDigitimes傘下の市場動向調査機関であるDigitimes Researchは、SiCが自動車用途において注目を集めており、2025年までに車載パワー半導体の25%を占めるとの予想を発表した。

現在、世界各国で温室効果ガスの排出制限の強化に向けた動きが進んでおり、ガソリン車の販売を禁止する流れが加速している。その一方で電気自動車(EV)の販売促進を奨励するインセンティブを設けるなど、市場環境が変化しつつある。SiCはEVでの活用が期待されており、Digitimes ResearchはEVの世界販売台数が2025年までに1000万台に近づくとの予測を示しており、これによりSiCを活用した電源コンポーネントの需要が拡大するとみている。

SiCはその特性から高温・高電圧に耐性があり、冷却機構の簡素化なども含め、システムコストの低減を図ることが期待されている。そうした背景から、ロームをはじめ、Cree、STMicroelectronics、Infineon Technologiesなど、世界中の主要なIDMはいずれもSiCのビジネスの強化を進めており、中国系半導体企業も中国政府の政策的支援の下で次々と参入を果たすなど、世界で注目が高まっているとDigitimes Researchは指摘している。

ロームがSiCパワーデバイス増産に向けた新棟竣工

こうした市場動向を踏まえロームは、SiCパワーデバイスの生産能力を強化している。2019年2月より子会社であるローム・アポロの筑後工場にて新棟を建設していたが、このたび完成し、竣工式を執り行ったと1月7日に発表している。

  • ロームアポロ

    ロームアポロ筑後工場のSiCパワーデバイス製造新棟 (出所:ローム)

新棟は、さまざまな省エネルギー技術を用いた生産設備を導入するとともに、使用する電力を100%再生可能エネルギーでまかなう環境配慮型の最新型の工場であり、SiCパワーデバイスの中長期的な需要増加に対応できる生産体制を構築するとしている。これから、製造装置を搬入し立ち上げて、2022年からSiCデバイスの生産を開始する予定だという。

ロームは、2010年にSiCパワーデバイス(SiC SBD、SiC MOSFET)の量産を開始して以来、世界で初めてとなるフルSiCパワーモジュールやトレンチ構造を採用したSiC MOSFETの量産を手掛けてきた。一方で、製造面においても結晶引き上げからの一貫生産体制を構築し、ウェハの大口径化や最新設備による生産効率向上にも取り組んできており、STMicroelectronicsと供給契約を傘下のSiCrystalが締結するなど、SiC市場の拡大を目指している。

  • ローム

    ロームの第3世代となる6インチSiCトレンチMOSFET (編集部撮影)

なおロームは、2025年までにSiC市場シェア30%を獲得するという目標のもと、自動車と産業機器の注力分野に据え、事業を展開している。ただし、市場については市況の混乱の影響もあり、2018年4月に発表した予測から2年ほど遅れた状況であり、その規模は、2025年段階で1500億円程度となるとの見方を示している。