米国国防総省傘下のDefense Microelectronic Activity(DMEA)は、国家安全保障のために必要なレガシーおよび先端の半導体チップの調達を潤沢に行えるようにするため、2020年11月にGLOBALFOUNDRIES(GF)と新たに4億ドルの半導体調達契約を結んだと米国政府調達情報に関する専門メディア「GovCon Wire」や米国軍用エレクトロニクス情報専門メディア「Military & Aerospace Electronics」など複数のメディアが報じている。これにより、国防総省とGFとの契約金額は累計11億ドルに達するという。
GFは、IBMから買収したFab9(旧IBMバーリントン工場、バーモント州)およびFab10(旧IBMイーストフィシュキル工場、ニューヨーク州)は、米国防総省からもともと「DoD Trusted Foundry」 (国家安全保安上、信頼して軍用チップの製造委託をできるファウンドリ施設のことで、DoD Trusted Foundry ProgramによりDMEAが認定・管理している)との認定を受けていたが、新たにニューヨーク州にある同社にとって先端のFab8(14/12nmプロセス)もTrusted Foundryに認定された。同社は、米国政府の輸出規制に対応するため、130億ドルを投じてFab 8を拡張することにより、国武器取引規則(ITAR:International Traffic in Arms Regulations)および米輸出管理規則(EAR:Export Administration Regulations)への準拠を目指すと2020年5月に発表していた。
またGFは、中国四川省成都に建設した半導体ファブを量産開始することなく閉鎖し、中国でのオペレーションから撤退しており、こうした行動が、DMEAによるGFへの信頼を増すことにつながり、半導体調達額の引き上げにつながったと、米国の半導体業界関係者は見ている。
米国政府は、国家安全保障確保およびハイテク覇権維持のため、米国内の半導体製造を強化する方向で国内外の主要半導体メーカーに米国内に新たなファウンドリ向けの最先端ファブを建設するよう誘致している。GFは、すでに最先端ロジック向けプロセス開発を中止してしまっているが、14/12nmプロセスまでは製造可能である。しかし、その先の先端プロセスでのファウンドリサービスを行えるファブは米国内には存在しない。そこで、台湾からTSMCをアリゾナ州に誘致して5nmプロセスまで米国内で行えるようにしようとしている。
米国政府は、IntelやSamsungにもファウンドリ向けの先端ファブを米国内に建設するよう要請しているといわれている。韓国内では、テキサス州オースチンにあるSamsungのFab S-2(プロセスは14nmどまり)にEUVラインを増設することを検討中との報道が出回っている。Intelは現在、トラブル続きのCPUの製造を続行するかそれともTSMCに製造委託するかの検討中であるからそれどころではないだろう。今のところ、IntelもSamsung米国子会社であるAustin Samsung SemiconductorもDoD Trusted Foundryの認定を受けていない。TSMCは米国に子会社を設立したのち、Trusted Foundryの申請をすると思われる。