Blue Prismは10月7日、オンラインによる記者説明会を行い、11月2日からインテリジェントオートメーションのクラウドサービスである「Blue Prism Cloud」を日本市場に本格展開すると発表した。従来のエンタープライズ向けのBlue Prismに加え、AI技術などインテリジェントオートメーションに必要な機能をクラウドサービスとして提供する。

SaaSとして統合管理型のRPAを提供

同社では、進化したRPAを「ロボット」ではなく「デジタルワーカー(Digital Worker)」と呼んでおり、人とテクノロジーが重複する部分がデジタルワーカーと定義している。

  • Blue Prismが定義するデジタルワーカー

    Blue Prismが定義するデジタルワーカー

Blue Prism会長兼CEOのジェイソン・キングドン氏は「新サービスはさまざまな業務において、簡単にデジタルワーカーにアクセスできるアベイラビリティを提供する。日本は自動化が進んでおり、テクノロジーの使われ方も豊富なことから、役立つと確信している」と話す。

  • Blue Prism会長兼CEOのジェイソン・キングドン氏

    Blue Prism会長兼CEOのジェイソン・キングドン氏

Blue Prism CloudはMicrosoft Azureと連携し、自然言語処理、非構造化テキストの読み取り、機械学習などのAI関連技術が標準搭載されており、業務自動化に活用することができる。

Blue Prism Japan CTO兼製品戦略本部長 製品戦略本部の小林伸睦氏は、新サービスについて「従来から提供している統合管理型のRPAであるBlue Prismに加え、導入方法論であるRobotic Operating Model(ROM)、インテリジェントオートメーションのマーケットプレイス・コミュニティのBlue Prism Digital Exchange(DX)のコアテクノロジーを搭載し、SaaSとして提供するものだ」と説明した。

  • Blue Prism Japan CTO兼製品戦略本部長 製品戦略本部の小林伸睦氏

    Blue Prism Japan CTO兼製品戦略本部長 製品戦略本部の小林伸睦氏

これら従来のノウハウやコアテクノロジーを活用することで、新サービスでは「日常的なAI活用」「顧客との関係強化」「デジタルワーカーの即戦力活用」を可能としている。

日常的なAI活用では組み込み済みのAI機能を活用し、新しいアイデアをすぐに業務に反映でき、最新技術をBlue Prismのエコシステムから取り込めるほか、機械学習を用いてビジネスの優先度に基づいて、デジタルワーカーが自律的に自動化業務の実行を管理する。

顧客との関係強化については、人とデジタルワーカーのリアルタイムでの協業を推進し、フロントエンド業務からバックエンド業務まで一元的に自動化することで、カスタマーエクスペリエンスを向上するという。

デジタルワーカーの即戦力活用に関しては、高度な開発支援ツールと管理機能により、デジタルワーカーの展開を迅速に行うことができ、市場の変化と競合企業への対応力と事業継続性を強化することが可能。ダッシュボードでデジタルワーカーのパフォーマンスとライフサイクルを見える化し、投資対効果とビジネスの寄与度をリアルタイムで検証することができる。

  • Blue Prism Cloudの概要

    Blue Prism Cloudの概要

また、デジタルワーカーの自動化ライフサイクル全体を管理するカスタマイズ可能なダッシュボードのBlue Prism Cloud Hubは、ビジネスユーザー向けのインタフェースにより、運用管理業務を簡素化し、デジタルワーカーの稼働状況を可視化できる。複数の地域にまたがり大規模にデジタルワーカーを展開しているユーザーは、ダッシュボードをそれぞれのチームの言語にカスタマイズし、運用管理業務を委任することを可能としている。

同ダッシュボードに含まれているWireframerは、自動化プロセスのテンプレートを生成するプロセスデザインツールのため、アプリケーション間の連携や例外処理まで適切な制御が事前に定義され、開発生産性と保守性が向上するという。

さらに、Blue Prism Cloud Channelsは、ビジネスアプリケーションとの連携、電子メールの読み込み、SMS、チャットボットとの連携機能を提供するほか、Blue Prism Cloud Interactはデジタルワーカーと人との協業のためのウェブインタフェースを提供する。

カスタマイズ可能なウェブインタフェースにより、バックオフィス業務だけでなくフロントオフィスの業務まで自動化の適用範囲を広げることができ、手動により起動される自動化プロセスや人が途中で介在する必要があるプロセスの自動化にも対応できるように設計されている。

デジタルワーカーの生産性を高めるとともに、投資対効果を最大化するために機械学習予測モデルでワークロードを自動的に調整する機能のBlue Prism Cloud IADAはSLA要件、リアルタイムでの業務量の変動、IT環境の状況に応じて、デジタルワーカーのパフォーマンスを最適化するという。

デジタル改善ではなく、真のDX実現に向けて

Blue Prism 社長の長谷大志氏は、日本法人のビジネス概況について「2017年の設立以降、顧客数、売り上げは順調に推移している。背景としてはパートナーとの協業が進展し、パートナーからの紹介案件が全体の売り上げの50%(2019年は38%)を占め、契約更新率は98%となっている」と胸を張る。

  • Blue Prism 社長の長谷大志氏

    Blue Prism 社長の長谷大志氏

  • 日本法人のビジネス概況

    日本法人のビジネス概況

続いて、同氏はデジタルワーカー活用によるDXについて言及し、「これまではデスクトップ型RPAが普及し、“デジタル改善”が中心となっていた。しかし、ここ1~2年でデジタル改善に取り組んでいた一部の企業において本格的にデジタル変革(DX)に取り組みはじめた。これらの企業は会社のプラットフォームとしてRPAを活用するため、統合管理型のRPAに移行し、高度な統合管理機能、高い保守性・再利用性、総コスト抑制の仕組みを求めている。そして、新型コロナウイルス感染症拡大で統合管理型RPAの移行が急激に加速し、デジタル改善からデジタル変革の時代に突入したと実感している」との認識を示す。

そのような状況をふまえ、長谷氏はニューノーマル時代には業務のデジタル化に対してはインテリジェントなデジタル化、新しい働き方については人とデジタルワーカーの協業、不測の時代への備えに関してはスピード感を持った変革が必要だと提言し、「AIが組み込まれ、自律的に稼働するデジタルワーカーを活用したインテリジェントオートメーションを実現する」と力を込める。

  • ニューノーマル時代のDXへの提言

    ニューノーマル時代のDXへの提言

そして、同氏は「新サービスに加え、パートナーとともに構築する導入支援サービスをはじめとした『Digital Worker as a Service』により、Cloud Readyに対応し、スピード感を持ってDXを実現していきたいと考えている」と述べていた。

  • Blue Prismのクラウド戦略

    Blue Prismのクラウド戦略

参考価格は、新サービスの環境で稼働するデジタルワーカー単位の価格体系(ユーザー数、デスクトップ数、自動化対象システム数に依存しない)となり、1デジタルワーカーあたり年額311万円(5~9デジタルワーカーの場合、プロダクションサポート込み)~。