エネルギー効率を向上させる必要性は、今やオートメーションのあらゆる領域に影響を与えています。これには、ホームオートメーションの意味が現在とはまったく異なる頃に想像された白物家電も含まれます。エネルギーの経済的・環境的コストは、これらの機器を頼りにするようになった数十年前には消費者の利便性よりも優先度が低かったのですが、その不均衡は最近変化してきており、現在は対処されています。
最善の努力を尽くしているにもかかわらず、多くの白物家電はその機能のため常に大きなエネルギーを必要とします。これには、水や空気の加熱(湯沸かし器、オーブン、シャワー、洗濯機)、空気などの流体の冷却(冷蔵庫)、対流(トースタやオーブンの場合)、あるいは一般的な運動(洗濯乾燥機、掃除機の電気モータ)の組み合わせが含まれる場合があります。消費者環境では、これらの機器はkWオーダのエネルギーを必要とするため、住宅所有者にとって最も電気料金がかかります。
これと並んで、ますます高度な制御機能やユーザインタフェースを備えた民生機器が増えています。これらはセンサ、ディスプレイ、タッチパネルなどを備えた本質的に低消費電力のアプリケーションです。システムレベルで考えた場合、高レベルの電流を供給するように設計された同一電源を使用してこれらの補助機能に電力を供給すると、本質的に効率が低下します。多くのアプリケーションが、使用しないときにスタンバイ状態でありながら、すぐに使える状態になる必要があり、それを実現するためにはシステムとしてAC電源から40W(標準)以下の比較的低いレベルのDC電力を供給する、補助的なオフライン電源の必要性が高まっています。
この補助的なオフライン電源の主な目的は、スタンバイ中に可能な限り効率の高い電力供給を実現することです。この目的を達成するには、可能な限りコスト効率、空間効率、エネルギー効率のそれぞれが高くなるような電源を実装する必要があります。
さらに製品の設計技術者は、白物家電の安全要件も考慮する必要があります。電源に関しては、多くの場合、絶縁型ソリューションが必要となりますが、場合によっては、関連する仕様で要求される電気的絶縁レベルを、物理的設計を通じて実現できる場合もあります。このため、低電力の補助オフライン電源アプリケーション分野を対象とする、絶縁型および非絶縁型両方の低電力SMPSソリューションの需要が高まっています。
完全集積化ソリューション
一般的な動向として、高集積化と半導体製造プロセスの堅牢化へ向かっているため、デバイスメーカでは、オフライン電力変換用の1チップソリューションの開発が可能になっています。スイッチングMOSFETと制御回路を単一デバイスに集積化することによって、より高い電力密度を備えたスイッチモード電源の設計が容易になります。この電源によって、前述した補助機能に必要な電力量に対応して最適化され、白物家電の複数分野に展開可能な補助電力を提供できます。
補助電源に要求される電力は、アプリケーションや機能によって異なり1W未満から最高70Wまでに及びます。オン・セミコンダクターは、このアプリケーション分野向けのソリューションを開発してきた長い歴史を持っており、幅広いデバイスのポートフォリオを展開しています。
低電力補助電源に対する需要の増加に伴い、オン・セミコンダクターは高電圧スイッチャ「NCP1067xファミリ」を発表しました。これは低電力オフライン・スイッチモード電源向けに開発された製品で、コントローラとパワーMOSFETをSOIC7パッケージに集積化し、小型化を実現しつつ、非絶縁型(Figure 1)と絶縁型(Figure 2)のいずれの設計も可能なスイッチャとなっています。
NCP1067xは固定周波数モードで動作しますが、負荷が低下すると電力削減のために自動的にスタンバイモードに移行し、スキップサイクル動作を使用します。このデバイスには、トランスの補助巻線を必要としない自己供給型の設計が採用されていますが、補助巻線が利用可能な場合は、これを使用してオートリカバリ過電圧保護機能を有効にすることができます。また、出力の短絡保護からのオートリカバリも、時間ベース検出によって実装されています。
さらに独自のVery High Voltage(高電圧)技術により、RDS(on)が12Ωと低い700VのパワーMOSFETを内蔵しています。AC230Vに接続されたオープンフレーム構成では、15.5Wを供給可能な電源を実現できます。加えてEMIの改善のために、公称スイッチング周波数に±6%の変動を導入する周波数ジッタリングが採用されています。ジッタを加えるために使用する掃引のこぎり波は、デバイス内部で生成されます。非絶縁型設計では、フィードバックピンが使用され、出力電圧の一部が内蔵のトランスコンダクタンスアンプに印加されます。
高いブレークダウン電圧への要求増加
補助電源設計におけるもう1つの重要な動向は、パワーMOSFETのより高いブレークダウン電圧BVDSに対する要求です。一般に、これはトランジスタの物理的寸法に関係するため、ブレークダウン電圧を高くするにはトランジスタを大きくする必要があります。しかし、多くの場合、大部分のターゲットアプリケーションにとってこのソリューションは大きく高価すぎることになります。
MOSFETを集積化しているSMPSスイッチャの大半は、プレーナ技術を使用しています。このため、サイズとコストに対する市場の制約を満足するために、700VのBVDSを持つデバイスということになります。しかし、BVDSが高くなると、電源サージや電圧スパイクに対する保護能力が強化され、最終製品の堅牢性が向上します。こうした理由から、低コストで低額のBoMソリューションを実現できる、より高いBVDSを持つスイッチャを提供しようとする機運が高まっています。
これに対応して、オン・セミコンダクターは、SMPSコントローラとSuper Junction(スーパージャンクション)技術SUPERFET 2を活用してパワーMOSFETを集積化したスイッチャモジュールを開発しました。この技術により、800VのBVDSを実現しながらプラスチック製デュアルインラインパッケージに実装可能なモジュールを作ることができます。この製品ファミリは、市場の商業的要求を満たしながら製品の性能向上を図ることができる現実的なソリューションをメーカに提供する最初の製品と位置付けられています。
電流モードスイッチ「FSL5x8ファミリ」はPDIP-7パッケージで提供され、PWMコントローラとSUPERFET 2パワーMOSFETで構成されます。通常、800Vのブレークダウン電圧を達成するには、コントローラと独立したディスクリートMOSFETを使用する必要がありますがSUPERFET 2技術によって、両方のデバイスを1つの小型パッケージに集積化することが可能になりました。
これによって、低電力オフライン補助電源設計の上限である約40Wに対処できるほか、単一デバイスを、絶縁型(Figure 3)と絶非絶縁型(Figure 4)のフライバック設計の両方に使用できるようになりました。
NCP1067xおよびFSL5x8の両方とも、コンパレータとして動作するトランスコンダクタンスアンプが追加されており、非絶縁型フライバック電源が簡単に開発できるようになるため、使用可能な基板面積が最適化され、BoMを極力抑えることができます。
最終目的はスタンバイ電流の低減
非絶縁型電源ユニットの設計はすべて、供給可能な電力量が制限されますが、ここで概説した開発では、補助電源ユニット向け低電力オフライン電源ユニットアプリケーション分野の下限と上限を対象としたスイッチャを設計できることを示しています。また、非絶縁型フライバックコンバータは、一般に絶縁型よりも効率が高いため、運用コストも削減できます。
補助オフライン電源ユニットを使用する主な目的は、最終製品で消費されるスタンバイ電流を低減することです。アプリケーション向けに最適化された高集積デバイスを選択すると、より小さな基板面積と最小限のBoMコストでこれを実現できます。
著者プロフィール
James LeeON Semiconductor
Manager – Lighting Segment Marketing