米ミネソタ州ミネアポリスに本拠を置く新興半導体ファウンドリ「SkyWater Technology」のプレジデント兼CEOであるThomas Sonderman氏が、8月下旬に開催されたバーチャルな半導体製造に関する国際技術会議「Advanced Semiconductor Manufacturing Conference 2020(ASMC 2020)」において、「AI時代の半導体製造のリーダーシップ(原題:Manufacturing Leadership in the Era of Artificial Intelligence)」と題した基調講演を行い、同社の戦略を語った。ちなみに同氏は、米ニューヨーク州に設置されているGlobalFoundries(GF)のFab 8の製造担当役員であった人物である。

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    SkyWater Technologyのプレジデント兼CEOであるThomas Sonderman氏(左)と会社紹介の図面 (オンライン講演より筆者によるスクリーンショット、以下、出所表記のないものすべて同様)

米国資本による米国内唯一のファウンドリとして軍用チップも製造

SkyWaterは日本ではほとんど知られていないが、最近、米国政府が国家安全保障上の理由で米国のファウンドリ育成や海外からの誘致に力を入れ始めている関係で、「米国資本による米国内唯一の半導体ファウンドリ」として注目を浴びている。

ちなみに、AMDの半導体製造部門がスピンアウトして誕生したGFはアラブ資本、テキサス州オースチンにあるSamsung Foundryは韓国資本、米国数か所にファウンドリファブを展開するTowerJazzはイスラエル資本といった具合で、米国資本によるファウンドリというのは意外となかった。

米国では半導体サプライチェーンの脆弱性に関する脅威が増えており、国家安全保障や軍事作戦やのために必要とするマイクロエレクトロニクス・デバイスが危険にさらされている。このような脅威に対処するため、米国防総省は「信頼されるファウンドリ(Reliable Foundry)」認定制度を設けているが、SkyWaterは、その認定を受けたファウンドリとなっている。この認定プログラムは、米軍および国防アプリケーションで使用される電子部品の信頼性と安全性を確保するための国防総省の戦略の一環として、「防衛マイクロ電子工学活動(DMEA)」により管理されている。

SkyWaterのファブは200mm/90nmのレガシーファブ

2017年に設立されたSkyWaterの本社ファブは、新規に建設されたものではなく、もともと1980年代にミネソタ州に拠点を置いたミニコンメーカー「Control Data Corp(CDC)」によって設立された200mm対応の年代物のレガシーファブである。CDCはこのファブを1991年にCypress Semiconductor(2020年にInfineon TechnologiesがCypressを買収)に売却したが、その後Cypressはミネソタからの撤退を決め、2017年にミネソタ州の地元資本が出資する形でSkyWaterが誕生した。

現在、300名ほどの従業員で200mmファブを稼働させており、軍事用を中心に航空宇宙および防衛、自動車、コンピューティング&クラウド、消費者、産業、医療など、さまざまな市場でICを開発する必要のある顧客をプロセス開発や製造受託でサポートしている。プロセス技術としては90nmまでとしており、10nmを切るようなプロセスの微細化を進めるほかのファウンドリとの正面からの競争は避け、「テクノロジーファウンドリ」という概念を打ち出し、差異化を図ろうとしている。

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    SkyWaterのクリーンルームの様子。200mmウェハをSMIFボックスに収納して手で搬送しSMIFローダーでウェハを製造装置内に移送している (出所:SkyWater Technology Webサイト)

テクノロジーファウンドリとは?

同社が打ち出している「テクノロジーファウンドリ」とは一体何なのか? Sonderman氏は「ファウンドリには、ムーアの法則にしたがって微細化が進む先端ロジックを中心にビジネス展開するコンベンショナルファウンドリと、必ずしも微細化を目指さないアナログやMEMSなどのMoore-than-Mooreデバイスを専門にあつかうスペシャリティファウンドリがあるが、SkyWaterは、第3のカテゴリとなる“テクノロジーファウンドリ”のパイオニアである」と述べている。

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    ファウンドリの分類。コンベンショナル(従来からの)ファウンドリ、スペシャリティ(特殊デバイス専門の)ファウンドリ、テクノロジー(技術をサービスとして提供する)ファウンドリ

具体的なほかのファウンドリとの違いは、というと、技術を「Technology as a Service(TaaS)」としてとらえ、テクノロジーサービスプロバイダーとして、顧客が技術やプロセス開発のための実験段階から支援し、ファウンドリの定めた標準プロセスに固執することなく、技術やプロセスのカスタマイズに柔軟に対応することで、顧客が差異化したチップの開発を可能にするというものだという。

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    サービスとしての技術(TaaS)を売り物にしているテクノロジーファウンドリと従来型ファウンドリの守備範囲の違い

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    テクノロジーファウンドリモデルのカバーする生産量とカスタム化の範囲。大型ファウンドリとの比較

なお、同氏は講演の最後、「AI時代の技術的リーダーシップは、イノベーションと製品化のスピードで決まる。テクノロジーとビジネスの現場は、製造技術の変革を求めており、グローバルなサプライチェーンを再構築するビジネスチャンスでもある。ファウンドリは、この変化に対応する戦略を持つ必要があり、TaaSこそがイノベーションを促進する」と述べ、ファウンドリも単なる受託製造から変身を遂げる時がきたとした。

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    TaaSモデルにより、顧客のイノベーションを加速することが可能となる