2020年は緩やかな回復が進むDRAM市場だが、サプライヤ各社は設備投資に慎重な姿勢を見せており、生産能力増強や新工場の建設をあまり進めていない、との分析結果ならびに2020年のDRAM市場の成長率は3%程度に留まるとの見通しをIC Insightsが発表した。

主要DRAMサプライヤ3社の2020年の設備投資計画を見おると、短期的な需要に対応するための設備投資が主であり、Samsung ElectronicsのDRAM設備投資額は前年比21%減の49億ドル、SK Hynixも同38%減の40億ドル、Micron Technologyも同16%減の36億ドルと、軒並み大きく抑えるものとIC Insightsでは予測している。

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    2018年、2019年(ともに実績)、および2020年(予測)のDRAM大手3社の設備投資額 (出所:IC Insights)

ファブを新規に建設しようとすれば、建屋ならびに設備に莫大な費用が必要となり、それを償却するためには高い生産能力と稼働率を維持する必要がある。ウェハファブに60~100億ドル投じたとしても、稼働率が低い状態では、サプライヤにとっては負担にしかならない。特に、この数年は過去最高クラスの高い設備投資水準が続いてきた一方で、それに見合うほどの売り上げの伸びには至っていないことが懸念となっている。中でも2019年にメモリバブルがはじけた結果、DRAM市場は前年比で37%減となったが、設備投資額は2018年の過去最高額232億ドルに比べれば低くなったものの、それでも191億ドルと高い水準となっており、DRAMの売上高に占める設備投資の割合は30.5%と、2011年に記録して以来の高い値まで上昇していることも慎重になる一因と言える。こうした背景から、サプライヤ各社は、経済的な影響を抑えるために、今後数か月におよぶ市場の動きを踏まえ、生産能力と拡張能力を綿密に計算し、需給不均衡による潜在的なダメージを最小限にしようとしている。

大手3社のみならず、Winbondのような小規模なニッチDRAMサプライヤでさえ受けるダメージを警戒した動きを見せている。Winbondは台湾南部の高雄に新工場を建設しているが、当初は2020年末に完了する予定で、2021年からの商業生産を予定していた。しかし、同社は現在、2022年1月に設備の搬入を後送りしているという。

こうした慎重論が市場を支配しているため、2020年のDRAMに対する設備投資額は前年比20%減の151億ドルに抑えられる見通しだという。これは、2018年のDRAMに投じられた過去最高投資額232億ドルに比べれば3分の2の規模となる。

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    DRAM市場ならびに設備投資額の推移 (出所:IC Insights)