TSMCは8月10日、2020年7月の連結売上高が前年同月比25%増、前月比12%減の1059.6億NTドルとなったと発表した。これにより2020年の7か月累計売上高は前年同期比33.6%増の7272.6億NTドルとなった。
同社CFOのWendell Huang氏は、「5Gスマートフォン、HPC、およびIoT関連のアプリケーションに牽引されることにより、TSMCの5nmおよび7nmテクノロジーに対する力強い需要が第3四半期の売り上げを押し上げる見込みである」と述べ、2020年第3四半期の売上高が112億ドル~115億ドルのレンジに入るとの予測を示し、過去最高を記録する可能性が出てきたことを示唆した。
また同社は8月11日に開催した取締役会で52億7160万ドルの資本支出を承認。新たなファブの建設ならびに設備の設置、新規技術の導入、研究開発設備などに向けた投資が行われる予定である。
今後、TSMCの5nm EUVプロセス顧客は8社に増加か?
IntelおよびSamsung ElectronicsがEUVリソグラフィを用いた7/5nmプロセスで躓き、長期にわたって製造歩留まりが低迷しているという話題が半導体業界を駆け巡って以来、独り勝ち状態ともいえるTSMCの5nmプロセスに注目が集まっている。
Intelのトラブルは、同社CEOのBob Swan氏による業績発表の場での談話という形で発表されたのに対して、Samsungのトラブルは会社からの発表ではなく、同社の内情に詳しい関係者や顧客情報に基づくうわさレベルだが、その後も、Qualcommが5nmアプリケーションプロセッサ「Snapdragon875」や5Gモデム「Snapdragon X60」の製造委託先をSamsungからTSMCに切り替えたというような情報が中国ならびに台湾の複数メディアが伝えている。SamsungのEUVラインの歩留まりが確保されるようになれば、2社購買の可能性も残されているというが、その一方で、TSMCはEUVリソグラフィ用マスクに起因する欠陥を極限まで減らせたことから、EUV光の透過率を落とすぺリクル膜を使っていないことを宣伝するなどして、高歩留まりを顧客にアピールしている。
2020年8月時点でTSMCの5nm EUVラインは、Appleの次世代iPhone用プロセッサ「A14 Bionic SoC(仮称)」およびHuaweiのスマートフォン用プロセッサSoC「Kirin 1000 (仮称)」の量産でほぼフルキャパシティとされているが、米国商務省の通達によって9月11日以降はHuawei向けの出荷ができなくなるので、他社からの製造委託を受け入れる余地が生まれる見込みである。8月10日付の中国メディアGIZMOCHINAによると、とある調査レポートによるものとしながらも、TSMCに5nmデバイスの製造委託をしている顧客は以下の8社だと伝えている。ただし、TSMCは顧客情報を一切公開しないため、真偽は確認できない。
- Apple(iPhoneやiPad用A14 BionicおよびA14+ Bionicプロセッサ、Mac Book用CPU「Apple Silicon」など)
- Intel(GPUおよびCPU、現在交渉中と伝えられている)
- Altera(現Intel、FPGA SoC)
- Qualcomm(Snapdragon 5G AP、モデムなど)
- AMD(GPU、CPU)
- NVIDIA(GPU)
- MediaTek(Dimensity 5G AP、モデムなど)
- Bitmain(ビットコインマイニングチップ)
なお、Alteraは、Intelに買収されてすでに同社の一事業部門になっているので、実際には7社とするべきであろう。Alteraは、Intelに買収される前から長期にわたりTSMCに製造委託してきており、友好関係を築いてきた。現在、Intel FPGAとしては最新世代となるIntel 10nmプロセスを採用した「Agilex(アジレックス)」がアナウンスされているが、旧Alteraのスタッフの多くは、Intelの長期にわたる先端プロセスの歩留まり低迷に付き合うことで宿敵であるXilinxと闘えなくなることを心配しているのではないだろうか。